47.付き合いが長い所為 ページ47
「あんた今まで俺とAのこと見てて、よくそんなこと言えやしたね」
「違ェのか?」
「……まァ」
違うっちゃ違う、けれど一部そうっちゃそうというか。
「やっぱり手ェ出したんじゃねェか」
「手を出して…は…いやせんよ」
「なんだその間」
はああ、とわざとらしく俺は息を大きく吐き出して、額を押さえる。
出来ることなら今すぐにでも出て行って欲しい。余計なことを言わないでくれ。
「ドSのくせに、Aのこととなっちゃ急に奥手だもんな、てめェ」
顔を見ずとも、土方がニヤニヤと口角を持ち上げている様が目に浮かぶ。
「まだ手も出せねェか」
「……手は出てやせんけど、口なら出やした。口ならっつーか、口から?」
「何が出た」
「愛の告白」
げほ、と今度は土方が咳き込んだ。
ちらりと髪の隙間から顔を覗き見てやると、目を見開いてこちらを見ていた。どうやらさっきの咳は、俺の言葉への返事だったらしい。
「十ウン年越しにやっと出たのか」
「…まァ。そういうことでさァ」
「彼奴は何て?」
「……さァ」
「何が"さァ"だ」
「聞けてやせんから、返事。」
「あン?」
「彼奴が応えてねェのか、彼奴が応える前に俺が逃げるように意識飛ばしたか、どっちかでィ」
「…………お前らって奴は」
「ほんっと、めんどくせえ、って?」
「……。」
「俺もそう思ってやすぜ」
らしくもなく弱気になる原因は、全部彼奴。
今日、顔すら見せていない彼奴のせい。
いつも会っているはずなのに、早く会いたい。
…今はどちらかと言うと、会いたくない。
「その先に進む予定は?」
「予定も何も。
俺の方にも随分と難がありやすが、Aも何つーか、煮えきらねェっつーか。
今まで俺の事をそういうふうに意識してねェだろうから、仕方ねェことだとは思ってやすが」
そこでふと、土方が何かを考えるように宙に視線を浮かばせる。
それから「ははーん?」「成程?」なんて1人で呟いて納得しているものだから、気味が悪いにも程がある。
「また彼奴の悪ィ癖か」
「は?」
「もしそうなら、彼奴、全部知ってんじゃねェか?」
「何の話ですかィ、悪い癖?って?」
「彼奴、昔っから変わってねェのな、そういうとこ」
「いやどういうとこ」
何の説明も無しに1人で納得されて、こちらは置いてけぼりだ。
「彼奴はな、総悟。」
そして土方は言う。
────『変わっちまうのが怖い、ただの寂しがり屋だ』。
48.余裕なんて本当はないのだ→←46.気持ちと距離がすれ違う
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乙愛 - 草間さんのセリフにグッときたがワイは負けん…はっ!総悟!違う私は一筋じゃぁ (2018年12月19日 18時) (レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - 乙愛さん» コメントありがとうございます。良い意味でキュッとして頂けたら幸いです。物語が徐々に動き始めてきましたので、どうか今後も見守ってくれたら嬉しいです。 (2018年12月10日 22時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - なんか、心臓キュッってなりました。( ・∇・)きゅーん (2018年12月7日 22時) (レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - アルハさん» 本当に嬉しいお言葉、ありがとうございます。受験生なんですね…この作品で、少しでもアルハ様の応援が出来たらいいなと思っております。ありがとうございました。 (2018年11月28日 7時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
アルハ(プロフ) - 受験生の身でありながらついぶっ通しで読んでしまいました・・・笑上から下までタイプですありがとうございます。これからも応援してます! (2018年11月27日 16時) (レス) id: 5e4beefb64 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木ノ嶋 | 作成日時:2018年8月17日 23時