46.気持ちと距離がすれ違う ページ46
けほ、と咳が出た。
昨日に引き続き、俺は未だに布団の中でダウンしていた。
頭の下には、朝から彼奴が用意したのであろう、中身が水だけではなく、新しい氷も詰め込まれた氷枕が敷かれている。
きっと俺が寝ている間に、起きないように済ませたのだろう。
いつの間にやら。
Aはどうも今日は非番ではないらしかった。
俺は病人という現状に甘えて、昼過ぎ頃に目を覚ましたが、勿論Aが傍になんているはずもなかった。
(……だっせ)
全部、覚えている。
熱のせいにしたこと、全部。
…熱のせいにしようと言われたことも、全部。
『みんな、いつまでも昔のまんまじゃないんですね』
Aの表情が頭に残る。
それと同時に、昔聞いた、まだ少し若さを残す彼奴の声。
『変わるのが怖いのか?』
その声は確かに聞いたことがあるのに、その返事を覚えていない。
……返事は、したのだろうか。
もしかしたらしていないのかもしれない。だから、俺は覚えていないのかもしれない。
(……っつーのは)
(さすがに考え過ぎか)
ふう、と息をつく。
頭を動かすのが億劫だ。そのまま寝てしまおう。
ごろり、と寝返りをうち、瞼を閉じる。そのままゆっくり眠りの世界へ────
「よォ、邪魔すんぞ」
「………………………………………………」
声を聞かずとも、その煙の匂いで誰が来たのかすぐに分かってしまった。
探偵でなくてもすぐにわかる、チンケな謎解き。
「…何ですかィ、またお小言でも吐きに来やした?生憎こちとら病人ですぜ。説教は身体に堪えまさァ」
よっこらせ、と上半身のみを起こす。土方も適当な所に腰を下ろしていた。
「説教っつーか、てめェに訊きてェことがある」
「何ですかィ」
「Aと何かあったのか」
「…んなの、」
いつも何かあってやすよ、と応えると、そうじゃないと首を振られる。
「昨日、彼奴がお前の熱のことを報告しに来たんだが、どうも様子がいつもと違ったからな」
「…まァ、」
あったっちゃ、ありやしたからね。
とは口に出さなかったが、土方はひとりで勝手に頷いている。
「皆まで言うな、総悟。大体の検討はついてる」
「あん?」
不信感を隠そうともしない俺の表情を一瞥して、それから土方は口を開いた。
「ついに手ェ出したんだろ」
「死ね土方コノヤロー」
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乙愛 - 草間さんのセリフにグッときたがワイは負けん…はっ!総悟!違う私は一筋じゃぁ (2018年12月19日 18時) (レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - 乙愛さん» コメントありがとうございます。良い意味でキュッとして頂けたら幸いです。物語が徐々に動き始めてきましたので、どうか今後も見守ってくれたら嬉しいです。 (2018年12月10日 22時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - なんか、心臓キュッってなりました。( ・∇・)きゅーん (2018年12月7日 22時) (レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - アルハさん» 本当に嬉しいお言葉、ありがとうございます。受験生なんですね…この作品で、少しでもアルハ様の応援が出来たらいいなと思っております。ありがとうございました。 (2018年11月28日 7時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
アルハ(プロフ) - 受験生の身でありながらついぶっ通しで読んでしまいました・・・笑上から下までタイプですありがとうございます。これからも応援してます! (2018年11月27日 16時) (レス) id: 5e4beefb64 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木ノ嶋 | 作成日時:2018年8月17日 23時