23.文を通わす ページ23
「書くこと思いつかねェのか」
「ご名答です。お恥ずかしながら、生まれてこの方男の人とお付き合いしたことも、誰かに迫られたこともなくって。どうお返事するか困ってます」
苦々しく笑みを浮かべるも、沖田さんはじーっと白紙のお手紙を見つめるだけ。
何も書いていないはずなのに、何処かいたたまれなくなって、ぱっと沖田さんの手からそれを取り上げる。
「もういいでしょ、何も書いてないんですから。」
「炙り出したら見えんのかと思って」
「はい?」
「実は書いてるけど、俺にばれたくねェからさっさと追い出そうとしてたり、して」
「もう、馬鹿ですね。本当に何も書いてませんよ」
一瞬、どきっとしてしまった。
まだ書いていないことは事実だけれど、自分の心のうちを綴ろうとしていたのは確かで、それは沖田さんには見られたくないもので。
……というか、誰かに向けた手紙を、その誰か以外に見せるなんて恥ずかしくて出来やしない。
「どうしたんですか沖田さん、今日はやけに静かですね」
「んなことねェや。いつも通りのイケメン沖田さんでィ」
「はいはい」
そろそろ本腰入れて手紙書くんで出ていってくださいね、とぐいぐい沖田さんの背中を押す。
沖田さんは最後にもう一度だけちらりと机の方を見たけれど、そのまま黙って出ていった。
「……ふう」
要は暇だったんだろうな、沖田さん。
こんなところに油を売りに来るくらいだから。
……まあ、本来なら1番隊隊長が暇なはずはないんだけれど。
「書くかあ」
再度筆をとる。今度こそは書けそうだ。
拝啓、と筆を走らせ始めた。
◇◇◇
────数日後、手紙が届いたとザキが耳元で囁いた。
誰から誰に?なんて訊くまでもなく、あの丁寧に書かれた"草間友彦"の文字を思い出す。
(……返事か)
あれからAが手紙を送ったのか、そもそも書き終えることが出来たのかさえも知らなかったが、この分だと両方とも出来たのだろう。
びっくりするくらい正攻法で向かってくる草間の坊ちゃんに、苛立ちは募るばかり。
さっさとAに渡せ、と言うと、ザキは一目散に目的地へ走っていった。
「やけに辛気臭ェ顔してんなァ、総悟」
にやにやと笑いながら近づいてくるのは、憎たらしい土方コノヤロー。ふわりふわりと燻らす煙を尻目に、此処は喫煙所じゃねェぞと胸中で毒づく。
472人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
乙愛 - 草間さんのセリフにグッときたがワイは負けん…はっ!総悟!違う私は一筋じゃぁ (2018年12月19日 18時) (レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - 乙愛さん» コメントありがとうございます。良い意味でキュッとして頂けたら幸いです。物語が徐々に動き始めてきましたので、どうか今後も見守ってくれたら嬉しいです。 (2018年12月10日 22時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - なんか、心臓キュッってなりました。( ・∇・)きゅーん (2018年12月7日 22時) (レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - アルハさん» 本当に嬉しいお言葉、ありがとうございます。受験生なんですね…この作品で、少しでもアルハ様の応援が出来たらいいなと思っております。ありがとうございました。 (2018年11月28日 7時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
アルハ(プロフ) - 受験生の身でありながらついぶっ通しで読んでしまいました・・・笑上から下までタイプですありがとうございます。これからも応援してます! (2018年11月27日 16時) (レス) id: 5e4beefb64 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:木ノ嶋 | 作成日時:2018年8月17日 23時