22.天然漂白剤 ページ22
それは
内容は簡単。○月✕日、某所にて夕食でも一緒にどうですか、というお誘いのもの。
最初の文字から、最後の『草間友彦』の4文字までを漏れなく目を通して、私は息をつく。
これを届けてくれた山崎さんが何処と無く疲れていたのは、一体何があったのだろうか。
「……うーん」
どう返事をしようか。それに悩んで早、長針は既に半周を回り終えてしまった。
とにかく早めに返事をしたほうがいいだろうと考えて、筆をとる。しかしその先に進まない。
何せ男の人からのこのようなお誘いは初めてなもので、多少なりとも動揺してしまっているのだ。
嬉しさ半分、困惑半分。ほんのちょっぴり迷惑な気持ちと、ほんの少しの興味。
「……。」
ただの夕食のお誘いに対して、大層かもしれないが、この自分のいろんな感情が入り交じった現状を書き連ねようか。
そう決めて、いざ書き出そうとしたところで。
スパーンと部屋の襖が開いて、まだ何も書き出してすらいないお手紙を覆いかぶさるようにして隠す。
内容が内容なだけに、自分の内側をさらけ出そうとしていたので、何だか恥ずかしくて。
(……というか、声も掛けずにいきなり入ってくるのって、)
そろり、と目を向ける。そこにはじとーっと変なものを見るような目で私を見る沖田さんの姿。
「…何してんでィ」
「……いえ、別に、なにも」
ゆるりと身体を起こす。慌てて隠したせいで、紙がくしゃりと折れてしまった。
小さくため息をついて、その紙は端に退けてまた新しい紙を広げる。
「何か用事ですか?」
「ん?…あー、土方さんが探してやしたぜ」
「わざわざそれを言いに?」
「まァな」
「嘘ですね」
「なんで」
「私、今日はずっとこの部屋で書類の片付けしかやってませんから。土方さん、1度もここに来てませんし。」
「……、なんでィ、用事がなきゃ来ちゃいけねェのか」
「ふふ」
拗ねたように口を尖らせる沖田さんが可愛くて、笑いが零れる。
ようやく開けっ放しだった襖を閉めて、沖田さんが部屋の中へ入ってきた。
「の割りには書類とにらめっこしてねェじゃねェか」
「今は草間さんへのお返事を書こうとしてましたから。終わった書類はここに積んでます」
「……ふーん。見してみろ」
「まだ1文字も書けてません」
ほら、とぺらりと新しい紙を見せる。真っ白。驚きの白さ。
沖田さんは紙と私をじーっと見比べる。
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乙愛 - 草間さんのセリフにグッときたがワイは負けん…はっ!総悟!違う私は一筋じゃぁ (2018年12月19日 18時) (レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - 乙愛さん» コメントありがとうございます。良い意味でキュッとして頂けたら幸いです。物語が徐々に動き始めてきましたので、どうか今後も見守ってくれたら嬉しいです。 (2018年12月10日 22時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - なんか、心臓キュッってなりました。( ・∇・)きゅーん (2018年12月7日 22時) (レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - アルハさん» 本当に嬉しいお言葉、ありがとうございます。受験生なんですね…この作品で、少しでもアルハ様の応援が出来たらいいなと思っております。ありがとうございました。 (2018年11月28日 7時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
アルハ(プロフ) - 受験生の身でありながらついぶっ通しで読んでしまいました・・・笑上から下までタイプですありがとうございます。これからも応援してます! (2018年11月27日 16時) (レス) id: 5e4beefb64 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木ノ嶋 | 作成日時:2018年8月17日 23時