19.ヒューマンウォッチング ページ19
「聞いたぞ、総悟」
いつもと変わらず煙草を吹かしながら、土方さんがひょいと片眉を持ち上げる。
野次馬精神なのか、他に言いたいことがあるのか。どちらにせよ、俺は土方さんにうんざりとした表情を向けた。
「草間財閥の御曹司が、ウチの紅一点に求婚を持ちかけたらしいじゃねェか。」
「誰から聞いたんで?」
「強いて言うなら風だな。風の噂。誰が言いふらしてるっつーのを気にするのが馬鹿らしくなるくらい、屯所中はその話題が飛び交ってやがる」
「……はあ。」
わかりやすくため息をつく。
あの求婚現場には、自分と当人たちしかいなかったはずなのに、一体誰が見ていたというのか。
「……やってらんねェや、急に横から堂々と無礼を働かれた気持ち、あんたにわかりやす?」
「分かりたくもねェな。まァでもいいんじゃねェか?お前の刺激になるだろ」
「刺激?」
「今までずっと、出た芽は摘んできただろ。そりゃあAは美人で、いい女だ。周知の事実。俺ら猿共にもわかる」
「……。」
「あんないい女に、男が寄り付かねェわけがねェんだ。だが寄り付いた男を、いや寄り付こうとした男共を、Aの視界に入る前に弾き飛ばしたのは他でもないお前だ、総悟」
「……当たり前でさァ。誰が好んで、惚れてる女に他の男寄せ付けるんで?」
「まァ聞け。そのせいかおかげか、今まで恋敵っつー存在はいなかった訳だ。安心もするだろうな、なんせあいつにはお前がついてんだから。
けど草間の坊ちゃんは、そんなお前という柵に引っかかることなく、Aの視界に入ってきちまった。防ぎようがなく、対処のしようがない。そりゃそうだ、ンな予兆は何処にもなかったんだからな」
くどくどと言葉を捏ねくり回して、結局何を言おうとしているのかあえて遠回しにされていることに気づいて、眉を顰める。
「つまりな、総悟。俺は楽しみでもあんだよ。お前が正真正銘、真っ向から対峙した恋敵に、どう手を打っていくのかってのがな。」
「……は、部外者だからって高みの見物決め込むって訳ですかィ」
「当たり前ェだ。部外者だからな」
にやにやと口元を持ち上げながら、ぷかりぷかりと煙を吐き出す姿に苛立つ。
「当人のAはどこ行った?」
「昨日の件の書類を片付けてまさァ。自室にでもいるんじゃねェですかィ」
「あァ、そういやそうだったな」
目を細めて笑う土方コノヤローは何処までも楽しそうで、俺はわざと大きく舌打ちしてやるのだった。
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乙愛 - 草間さんのセリフにグッときたがワイは負けん…はっ!総悟!違う私は一筋じゃぁ (2018年12月19日 18時) (レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - 乙愛さん» コメントありがとうございます。良い意味でキュッとして頂けたら幸いです。物語が徐々に動き始めてきましたので、どうか今後も見守ってくれたら嬉しいです。 (2018年12月10日 22時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - なんか、心臓キュッってなりました。( ・∇・)きゅーん (2018年12月7日 22時) (レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - アルハさん» 本当に嬉しいお言葉、ありがとうございます。受験生なんですね…この作品で、少しでもアルハ様の応援が出来たらいいなと思っております。ありがとうございました。 (2018年11月28日 7時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
アルハ(プロフ) - 受験生の身でありながらついぶっ通しで読んでしまいました・・・笑上から下までタイプですありがとうございます。これからも応援してます! (2018年11月27日 16時) (レス) id: 5e4beefb64 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木ノ嶋 | 作成日時:2018年8月17日 23時