54.偵察班、密かに出動 ページ4
真選組としての用事を済ませたついでに、あの団子屋に立ち寄ることにした。
勿論、沖田さんが居ないことを確認してから。
「いらっしゃいませー！…あ！真選組の！」
私の顔を見るなり、例の人物はぱっと顔を輝かせる。眩しい。気分的なものも相まって、余計に眩しい。
「新入りさんですか？」
「そうです！最近入ってきたばかりの
「黄川、さん……」
ひっそりと探りを入れようと思っていたのに、こうも真正面から堂々と来られてしまっては、逆にこちらがどぎまぎしてしまう。
とりあえずみたらし団子を2本、注文すると、「かしこまりましたぁ」と可愛らしい笑顔を見せられ、一旦中へと引っ込んでいった。
「……はぁあ」
腹の奥底から湧き出たようなため息は、私の周りをぐるぐると充満する。
嫌な、淀んだ空気が、私だけの周りを浮遊していた。
「先にお茶を、お、っと、っと、っと…？うわっ！！」
あ、山崎さんが言ってた「ドジ」ってこれか、と即座に理解することになった。
冷静な私の頭は、黄川さんがテーブルに足を引っ掛けたのを見ていたし、湯呑みが宙に舞うのも見えていた。
そこまで見えていて、わかっていて、あ、これ不味くないか、という思考に辿り着くまでにタイムラグがあったのは、やはり多少なりともダメージを受けていたからだと今になって思う。
咄嗟にその場から離れようとして、しかし一瞬のタイムラグが生じた私にそれが避けられるはずもなく。
ばしゃあ、と湯呑みの中身を頭からかぶった。
「あっ……つく、ない……？」
「うわああああごめんなさい！！」
確かに湯呑みの中身を浴びたはずなのに、熱くない。
何かの間違いだったのかと思うけれども、ぽたりぽたりと髪から滴が垂れているので幻ではない。
「ああ！大丈夫ですか！！ごめんなさい！！熱いですよね！！？タ、タオル！いや火傷！！？冷やす方が先ですか？？！」
「いや、あの、黄川さ、」
わたわたと慌てる黄川さんの腕を掴んで、冷静に話を聞かせる。
「大丈夫です。火傷はしてません。湯呑みにも当たってませんし……なぜか、熱くないですし」
「そんなはず……あっ！またお湯沸かすのを忘れてた！！？」
ごめんなさいごめんなさい、と何度も頭を下げられる様子に、さっきまでの私を覆う淀んだ空気は何処へやら。
貸して貰ったタオルで、お湯(未遂)と共に拭き取ってしまったのかもしれない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 516人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
乙愛 - 吉沢亮さん、良すぎですよね……。ほんと、沖田さん…。現在1番好きな役者さんです。 (2019年2月11日 10時) (
レス) id: 6dafc5383a (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - お疲れ様でした！最後の写真みてみたいです…/// (2019年2月11日 10時) (レス) id: 6dafc5383a (このIDを非表示/違反報告)
ののこ(プロフ) - 毎回更新を楽しみにしていました。終わってしまって寂しさもありますが、素敵な小説に出会えて良かったです。ありがとうございました！ (2019年2月10日 1時) (レス) id: c2027c837f (このIDを非表示/違反報告)
sachoco(プロフ) - とても素敵な作品に出会えて幸せでした。ハッピーエンドでとても嬉しかったですし、完結した寂しさの反動も大きく、それ程この小説にハマっていたのだと思います。本当にお疲れ様でした！(実写版沖田さん…本当に完璧と言わざるを得ない程素敵だと私も思いました！) (2019年2月8日 19時) (レス) id: 6ffe0b9ea7 (このIDを非表示/違反報告)
春先未(プロフ) - お疲れ様でした…本当に面白く更新を楽しみにしていた作品だったので終わってしまい寂しさ半分、素敵な作品と出会えたという幸せな気持ち半分です。とても素敵な作品をありがとうございましたm(_ _)m (2019年2月8日 18時) (レス) id: 948ea5509c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：木ノ嶋 | 作成日時：2018年12月14日 8時
