55.光が眩しいと陰は濃い ページ5
「本当に、すみません……」
「いえいえそんな、お気になさらずに。怪我もしてませんし」
店主まで出てきて、ぺこぺこと頭を下げている。
一通り拭いたものの、寒さが目立つようになってきたこの時期にとって、隊服が湿ったままなのはさすがにきついものがある。
「お代は結構ですので……!」
「そんな、申し訳ないです」
黄川さんがわたわたとしている間に店主がみたらし団子2本を持って現れ、その現場を見、「杏奈ちゃんまたかぁ!!!」と叫ぶ始末。
常習犯なのか、と思うと思わず苦笑が漏れる。
とりあえず、早めに食べようと濡れた身体そのままに運ばれてきた団子を食べていたら、「早く拭いてください!」と、強引にほぼタオルを投げつけられたも同然であった。
「本当に結構ですので!」
「いやいや、ちゃんとお団子頂いたので、お代は払います」
「……でしたら、今回はお代は本当に結構ですから、今後もどうぞこの店を贔屓にしてください」
「…そこまで言うなら」
渋々引き下がる。黄川さんは申し訳なさそうに眉を下げている。山崎さんの言うことに間違いはない。
ドジだという点と、顔が可愛いという点。
ほんの少しだけ話して思ったけれど、きっと性格もいいんだろうな。
もやもや、もやもやと。
黒い霧がかかる。
「では、私はこれで」
「あっ、Aさん!」
踵を返してその場を後にしようとしたところで、そう呼び止められる。
「あ、あの、こんなことをしてから言うことでもないんですけど、」
「何ですか?」
「…Aさんと、お友達になりたいです」
やめてくれ、そんな曇りのない瞳を見せるのは。
きらきらと輝く表情を見せるのは。
────もやもや、もやもや。
自分の悪い所が浮き彫りになるような気がする。
気づかないふりを。いつもと同じように、知らないふりを。
「……はい、次来たとき、是非。」
にこり、と笑って見せて、その場を後にする。
ちゃんと笑えてたかなんて自分で分かりはしない。
(……あれ、そういえば)
(なんで黄川さん、私の名前、)
知ってたんだろう。
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乙愛 - 吉沢亮さん、良すぎですよね……。ほんと、沖田さん…。現在1番好きな役者さんです。 (2019年2月11日 10時) (レス) id: 6dafc5383a (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - お疲れ様でした!最後の写真みてみたいです…/// (2019年2月11日 10時) (レス) id: 6dafc5383a (このIDを非表示/違反報告)
ののこ(プロフ) - 毎回更新を楽しみにしていました。終わってしまって寂しさもありますが、素敵な小説に出会えて良かったです。ありがとうございました! (2019年2月10日 1時) (レス) id: c2027c837f (このIDを非表示/違反報告)
sachoco(プロフ) - とても素敵な作品に出会えて幸せでした。ハッピーエンドでとても嬉しかったですし、完結した寂しさの反動も大きく、それ程この小説にハマっていたのだと思います。本当にお疲れ様でした!(実写版沖田さん…本当に完璧と言わざるを得ない程素敵だと私も思いました!) (2019年2月8日 19時) (レス) id: 6ffe0b9ea7 (このIDを非表示/違反報告)
春先未(プロフ) - お疲れ様でした…本当に面白く更新を楽しみにしていた作品だったので終わってしまい寂しさ半分、素敵な作品と出会えたという幸せな気持ち半分です。とても素敵な作品をありがとうございましたm(_ _)m (2019年2月8日 18時) (レス) id: 948ea5509c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木ノ嶋 | 作成日時:2018年12月14日 8時