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68.秘密にしてねお兄ちゃん ページ18

「……何泣いてんだ」

「や、あの、見ないで貰えますか」



愕然とした様子で目を見開いているのは、こうなった元凶の人物。

ずび、と鼻を啜りながら、足早にそこから立ち去ろうとする。



「A、待て、総悟か?」



肩を掴まれて、強制的に立ち止まった。



「だったらどうと言うんですか」

「何があった」

「言えないことがあったということだけ、お伝えしておきます」

「……A」



咎めるような土方さんの声色に、顔を逸らす。

親に叱られる娘とは、きっとこんな気持ちなのだ。



「元はと言えば自業自得なんです、私の」



ぽつりと言った言葉に、気まずそうな土方さんの声が応える。



「……それは、こんな立ち話で済むような話か?」

「あんまり立ち話で済ませたくない話です。出来るならお酒を酌み交わしながらしたいくらい。」

「…どっか、出るか」

「大丈夫です。」

「何でだよ!何でお前ェはいつも俺には頑なな訳!?」

「身内に聞かせるのは、恥ずかしい話ですから」



私がそう言うと、肩を掴まれていた手の力が緩む。その隙を見てするりと抜け出した。



「どうか、見なかったことに」

「…いいのか、誰にも聞いて貰わなくて」

「いいんです。自分で全部持てますから」



いろんな出来事、いろんな事情、いろんな感情、すべて。

今まで見なかったふりを、気づかなかったふりをしてきたぶん、すべて。

変わるのが怖いだなんて大層な理由をつけて、ただ目を逸らしていただけのこと、すべて。

抱え込むと決めた、背負うと決めた。

それが私の業。



「……そういう顔してる時ゃ、聞き入れるようなお前じゃねェわな」

「よくご存知で」

「お前がちっせェ頃から見てんだぞ」



兄がいたらきっとこんな感じなのだろう。

さっきまでぐちゃぐちゃだった心は、幾分か楽になっている。



「……これだけ、いいですか」

「何だ」



土方さんは口数は多い方ではないだろうし、器用でもない方だと思う。

けれど、ぶっきらぼうでも、ちゃんと話を聞いてくれるから。

だから、私も安心して任せられる。

安心して、口を滑らせることが出来る。



「……私、沖田さんが好きです」



誰にも言わないで下さいね、と言った時、やはり私の声は震えてしまった。

精一杯強がって、笑って見せる。

きっと何かを感じ取られただろう、けれど構わない。

ようやくちゃんと向き合うことにした感情から、逃げたくなかったから。

69.昔話をしよう→←67.「恋は罪悪ですよ」



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乙愛 - 吉沢亮さん、良すぎですよね……。ほんと、沖田さん…。現在1番好きな役者さんです。 (2019年2月11日 10時) (レス) id: 6dafc5383a (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - お疲れ様でした!最後の写真みてみたいです…/// (2019年2月11日 10時) (レス) id: 6dafc5383a (このIDを非表示/違反報告)
ののこ(プロフ) - 毎回更新を楽しみにしていました。終わってしまって寂しさもありますが、素敵な小説に出会えて良かったです。ありがとうございました! (2019年2月10日 1時) (レス) id: c2027c837f (このIDを非表示/違反報告)
sachoco(プロフ) - とても素敵な作品に出会えて幸せでした。ハッピーエンドでとても嬉しかったですし、完結した寂しさの反動も大きく、それ程この小説にハマっていたのだと思います。本当にお疲れ様でした!(実写版沖田さん…本当に完璧と言わざるを得ない程素敵だと私も思いました!) (2019年2月8日 19時) (レス) id: 6ffe0b9ea7 (このIDを非表示/違反報告)
春先未(プロフ) - お疲れ様でした…本当に面白く更新を楽しみにしていた作品だったので終わってしまい寂しさ半分、素敵な作品と出会えたという幸せな気持ち半分です。とても素敵な作品をありがとうございましたm(_ _)m (2019年2月8日 18時) (レス) id: 948ea5509c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:木ノ嶋 | 作成日時:2018年12月14日 8時

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