63.態と逆らえない ページ13
ジャケットを返したい、という旨を伝えるために、草間さんに電話をかけているのだけれど、一向に出る気配がない。
初めこそ、忙しいのかな、と思っていたが、あまりに繋がらなさすぎて、無視されているのではないかと疑う。
「……」
結局出ることのなかった電話の発信画面を閉じる。
やり返しのつもりだったりするのだろうか、これは。
草間さんを、弄んでいる、と思われても仕方の無いことをしている。
気持ちに応えるでもなく、拒むでもない、どっちつかずの態度。
良くないことは分かっている、けれど。
(…なんだかなあ)
随分と臆病になってしまった気がする。
幼い頃はこんな風ではなかったのに、一体何処でこうなってしまったのだろう。
「憂いげなため息ついてどうした」
「わ、びっくりした、いつから居たんですか、土方さん」
いつの間にやら、縁側に腰掛けていた私の隣に土方さんが鎮座している。
土方さんは私の質問に答えることなく、すっと自身の携帯を私に見せた。
「? なんですか?」
「憂いてるところ悪ィが、お前に仕事が出来た」
「仕事?」
小首を傾げていると、土方さんはカチカチと携帯を操作する。
そして画面をぱっと見せてきた。
それは文面だった。
「飲んだくれを回収して来い」
淡々とそう言う土方さんに、嫌味ですか、なんて返せるはずもなく。
その文面には、短く、「お宅のとこの美青年が酔いつぶれてるから迎えに来てあげて」と記されていた。
「これは俺が贔屓にしてる店の主人からのメールだ」
「はあ」
「美青年、だなんて形容される奴を、俺はひとりしか知らねェ」
「…はあ」
「つーことで副隊長、責任もって迎えに行ってこい」
「…………。」
厄介事を押し付けられた、と思った。
「まだ夕方前じゃないですか」
「俺が知るか」
「そもそも、飲めないじゃないですか、年齢的に」
「良い子は絶対に真似すんな。良い子じゃなくても真似するな。」
「……はああ」
わざとらしく大きなため息を吐き出す。
土方さんの考えなんて知れない。知る術もない。
ぎこちない距離感の私たちを、無理にでもひっつける口実にしているのか、単純に面倒臭いだけなのか。
…どうしよう、後者な気がしてきた。
「……わかりました、行ってきます」
最後に訊きますけど、と立ち上がりながら口を開く。
それは副長命令ですか、と問うと、彼はそうだ、と言った。
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乙愛 - 吉沢亮さん、良すぎですよね……。ほんと、沖田さん…。現在1番好きな役者さんです。 (2019年2月11日 10時) (レス) id: 6dafc5383a (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - お疲れ様でした!最後の写真みてみたいです…/// (2019年2月11日 10時) (レス) id: 6dafc5383a (このIDを非表示/違反報告)
ののこ(プロフ) - 毎回更新を楽しみにしていました。終わってしまって寂しさもありますが、素敵な小説に出会えて良かったです。ありがとうございました! (2019年2月10日 1時) (レス) id: c2027c837f (このIDを非表示/違反報告)
sachoco(プロフ) - とても素敵な作品に出会えて幸せでした。ハッピーエンドでとても嬉しかったですし、完結した寂しさの反動も大きく、それ程この小説にハマっていたのだと思います。本当にお疲れ様でした!(実写版沖田さん…本当に完璧と言わざるを得ない程素敵だと私も思いました!) (2019年2月8日 19時) (レス) id: 6ffe0b9ea7 (このIDを非表示/違反報告)
春先未(プロフ) - お疲れ様でした…本当に面白く更新を楽しみにしていた作品だったので終わってしまい寂しさ半分、素敵な作品と出会えたという幸せな気持ち半分です。とても素敵な作品をありがとうございましたm(_ _)m (2019年2月8日 18時) (レス) id: 948ea5509c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木ノ嶋 | 作成日時:2018年12月14日 8時