8.友達100人できるかな ページ8
.
ドアのスイッチを押して、窓を開けた。
涼しい風が入り込み、私の頬を滑る。
窓の外には緑生い茂る山々がそびえ立ち、山道の下には清流が見えた。
古来から日本には八百万の神々がいると言われてきたが、こういう風景を見るとやはり神は存在したのだ、と思うのだ。
そんな山の中に私立箱根学園高校は、ある。
最寄り駅から歩いて2時間、車でさえ40分かかるような山奥に偉大なる創設者が箱根学園を構えたおかげで、ほとんどの生徒が寮暮らしを余儀なくされる。
かくいう私もその一人である。
ほとんどの荷物は宅配でもう寮に送ってしまったけど、ロードバイクだけは傷がつくかもしれないから車に積んできた。
朝っぱらから遠出しなくちゃいけなくなったパピーがおこです。和睦したい。
なぜこんなに前フリが長いかというと今日は私立箱根学園高校の入学式だからである。
.
「何でこんな朝はよから車出さないといけないんだ」
「ごめりんこ」
とか言いつつ車からロード出してチャリ小屋まで運んでくれるパピーだいすきよ。
「でも今日休みなんやろー？いいやん。それにチャリ部見れるし」
「そのために有給とったんだ」
「あ、自分の娘の入学式を一目見るためとかではなく？」
「当たり前だ。」
「うーん、期待を裏切って行くこのスタイル嫌いじゃないぞー」
ちなみにお父さんは高校時代に自転車競技部に所属しており、国体の選手でもあった。
それから成人して30年間ロードには乗っていなかったが、私が春休みからロードを始めたことにより、ロードを再開した。
それまで私は、お父さんが高校の時自転車競技部であったことも知らなかったし、
ましてや国体の選手にまでなっていたことさえ知らなかったのだ。
ある意味私がロードに出会ったのは、運命だったのかもしれない。
今は父娘2人してチャリ馬鹿です。
「じゃ、教室行かんなんから！行ってきまーす！」
「忘れ物ないなー？」
「多分ねー！」
バイバイと手を振って、正面玄関へと歩みを進めた。
私と同じ新入生らしき人ごみをかき分けて玄関に向かった。
押しつぶされながらも、水色の真新しい制服のあいだをぬっていく。
やっとのことで抜けられた、と思ったその時、桜色の大きな何かが視界を遮った。
それは私達を歓迎するかのように花開かさせた大きな長寿の桜の木だった。
風に吹かれてはらはらと桜色の花弁が流れていく。
春が、始まりを告げる。
人生初の高校の入学式が始まろうとしていた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 10人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「トリップ」関連の作品
この作品が参加のイベント ( イベント作成 )
この作品が参加のイベント 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ミカヅキ(プロフ) - みんくるさん» わかりました！ありがとうございます！ (2015年8月22日 14時) (
レス) id: 0f03a94449 (このIDを非表示/違反報告)
みんくる(プロフ) - ミカヅキさん» すみません！単純ミスです！どちらも標準語だとかんがえてもらって結構です^o^コメントありがとうございますm(_ _)m (2015年8月22日 8時) (レス) id: 8267781c3e (このIDを非表示/違反報告)
ミカヅキ(プロフ) - お父さんは関西弁でお母さんは標準語っていう設定なんですか？イマイチ自分の中で整理がつかなくて・・・ (2015年8月22日 0時) (レス) id: 0f03a94449 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みんくる | 作者ホームページ：http://nanos.jp/connector/
作成日時：2015年3月18日 20時
