＜完＞天才と不幸少女【有馬貴将】

十五撃目 ページ16

有「いやー……降ってきたね」


あ「傘…持ってないですよね」


有「持ってたら雨宿りしないよ」






うん…そうですね


ここはもう閉業してしまったらしい建物の屋根の下、


そこで私たちは雨宿りをしていた



私が外に出ると必ずって言っていいほど雨が降るんだよね…



これも運の悪さなのかな




有「あー…上着濡れちゃったよ」


あ「……はー…」




ザァァァァァァァァ…



ヒドイ雨だな



こんなに降ってきてさ


私のこと、笑ってるのかな



運のないやつだって



しょうがないじゃん、こんなの




運命の男とか言ったけどさ…




ぶっちゃけ、要らないよ、そんなの





幸せって、不幸を見えなくするからね






有「……どしたの」


あ「…はい？」


有「暗い顔してさ、なに考えてんの？」



あ「……いえ、特になにも」


有「嘘だ」




有馬さん、そんな目で見ないでくださいよ



あ「……報告書、書かなきゃって思ったんです」



有「あ、そっか…じゃあ早く帰らなきゃね」


あ「そうですね…でも


こんな雨じゃ当分は…」



帰れませんね、そう言おうとしたら





パサ…



あ「……え」


有「こーすれば濡れない」




気づいたら有馬さんの匂いがした



それはたぶん、有馬さんの上着が、私の上に被さってたから





もう次の瞬間には、雨宿りしてた建物の屋根から連れ出されて



たくさんの水溜まりができた歩道を




手を引かれて歩いてた

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