【あんスタ】愛を零してマルグリット【合作短編集】 (ページ14)

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『…夏目くんこそ、どうして此処に？』
「さァ、どうしてだと思ウ？」

彼は決して水浴びするために噴水に訪れるような人ではない。だとすれば、私に用事があるはず…なのだけれど、心当たりは全く無いのだ。それなのに、目の前の彼は意味ありげな微笑みを深めるばかり。まっすぐに交わる琥珀色に何もかも見透かされているような感覚を覚えて、つい逸らしてしまう。

『…わからない、なぁ』

暫しの沈黙の末に出した応えは自分でも驚くほど弱々しかった。なんだか、これじゃあ…

「ボクは君を探していたんダ。…本当はわかってるんじゃなイ？」

酷く優しい声に絡めとられて、再び視線は交錯する。そういえば、最初に私の想いも見破ったのも彼であの時もこんな感じだったなぁ。今更隠すことなどないなら、いっそ吐き出してしまった方が楽になるだろうか。それでも、やっぱり躊躇ってしまう。彼の促すような視線を受けて漸く答えを出した。

『…先輩のこと、かな。』
「正解♪子猫ちゃんがどうするのカ、ずっと気になっていたんだけド…。どうやら心境の変化があったみたいだからネ。」
『そう、だけど…夏目くんはなんで知ってるのかなぁ…。』
「フフ、魔法使いだからネ…と言いたいところだけド、単に子猫ちゃんがわかりやすいだけだヨ。…それで、どうするノ？」

そう言ってのける彼の考えは相変わらず読めない。なんて不公平なんだ。思わずそう言いたくなるのを堪えて、先程の考えを漏らした。

『あのね、私…先輩に伝えようか迷ってるの。今日はエイプリルフールだし、それで』
「もしかしテ、その告白を“全部嘘だ”って誤魔化すノ？それじゃあ何も解決しないヨ。」

私なりに考えた結果だった、はずなのに。彼はばっさりと切り捨てた。先程までの優しげな雰囲気は一瞬で消え、スッと細められた瞳は静かに怒りを湛えているようだった。

「予言しようカ、そのままだと君は一生嘘をつく事になル…先輩にも自分にもネ。それで本当に後悔しないと断言出来ル？」
『…後悔はすると思う。それでも、今のままじゃ駄目なの。』

なんだか、此処で視線を逸らしたら負けのような気がして静かに見つめ返す。

「エイプリルフールは今日だけだヨ。」
『うん、わかってる。』
「嘘をついて、センパイが傷付くとは思わないノ？」
『…いっそ、そのせいで嫌われるくらいが良いんだけど。』
「…子猫ちゃんって意外と頑固だよネェ。」

一つ溜息をついた彼は少し考える素振りを見せて静かに言葉を紡ぐ。