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「珍しいね。イチコちゃん、今日は居ないのかい?」
「大変申し訳ありません・・・昼間に出掛けたきり、まだ戻ってきていないのです」
「それは心配だね。帰ってきたら仕置きをつけなくては」
「重々に・・・では、本日は別の者を手配いたしますので・・・」
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わたしは大衆のなかに混ざって、舞台の観覧に訪れていた。
彼が働く見世物小屋。
人でありながら人として認められなかった彼らがつくりだすそれは、とても奇妙でもの哀しく、切なかった。
まるで自分を見ているようだと思った。
他に生き方を知らず、欲しい居場所すら見つけられない、必死に生き狂う闇の底。
「他に、生き方を知らんねん」
彼もまたおなじことを言っていた。
籠の外に飛び出したところで、わたしたちはきっと、俗世の波に呑まれて死んでゆくのだろう。
飼い慣らされた小鳥のように。
舞台の上でも、彼はひときわ輝いていた。
手枷、足枷、首枷・・・
金属のそれらをじゃらじゃらと響かせながらギターを搔き鳴らし、魂の叫びともとれる唄を聴かせる彼は、ほんとうに美しく、醜かった。
周囲の観客がどれほど気味悪がろうと、おもしろがろうと。
「・・・すばる・・・」
わたしにはあなたしか見えていない。
ふと目が合えば、緋色のひとみが微笑む。
わたしは首筋の噛み傷を指でたどり、恍惚とする。
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月のみぞ知る夜の都。
小屋の鬼と一人の遊女が消えたことなど、だれも知らない。
Fin.
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べに(プロフ) - ココナッツさん» うわあああああココナッツさん!ありがとうございますわたしも好きです(T T) (2018年3月14日 18時) (レス) id: c68c31e30a (このIDを非表示/違反報告)
ココナッツ(プロフ) - うわああああべにさんっ!うわああああ…(ワケわからなくてごめんなさい、汗)…好きですっ! (2018年3月14日 15時) (レス) id: d0c3580366 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:べに | 作成日時:2018年3月13日 0時