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手を引かれ、まだ日が頂点に達さぬうちから連れてこられた、檸檬。
午後から開く店には、まだだれもいない。
わたしは招かれるまま、あの部屋＿＿＿＿＿イエローベルのなかへと足を踏み入れる。
「はじめてあなたの音をきいた瞬間から・・・俺はずっと、この指が欲しくてたまらんかった」
彼は言った。
わたしの指の先に唇をつけながら。
「Aさん」
「・・・名前」
「なんでも知ってんねん。Aさんのことなら・・・港町の標本屋で働いとることも、仲の良い妹さんがおることも。
においをたどって追いかけてたから・・・」
ぬるい舌が耳の端をなぞった。
首に押し当てられた、高い鼻。
「・・・勇気がなかってん。Aさんに失望されることがこわくて」
わたしは腕を伸ばし、彼の頭を覆うハットを外す。
そうしてその薄い肩からギグバッグを下ろしてやり、改めて彼の姿を。
「きれいな尾ね」
「・・・平気なん？」
「ええ。人間だとか獣だとか、そんなことはどうだっていいの。
わたしが焦がれているのはあなたなんだから」
ふわふわと揺れ動くそれを撫でる。
大きな耳も、獰猛な目も。
その手の形に負けないほどに美しかった。
「すてきな狼さん」
「・・・亮って呼んで」
「亮」
「うん・・・A」
唇が重なる。
混ざる舌と呑み込む唾液。
ずっとずっと夢に見ていた、待ちに待ったこの瞬間を、わたしは身体中で存分に味わう。
目を閉じて、耳を澄ませて。
「この指、噛み砕いてもええ？」
「いいよ。亮になら・・・全部あげられる」
骨の髄まで貪りつくしてほしい。
「A、かわいい」
あいしてると＿＿＿＿＿＿＿＿ささやく声。
わたしは震えた。
快楽と激痛の狭間で。
「ふたりなら・・・どんな音を奏でられるやろ？」
悲鳴も、啼き声も、全部。
目を閉じて、耳を済ませて。
Fin.
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べに(プロフ) - ココナッツさん» うわあああああココナッツさん！ありがとうございますわたしも好きです(T T) (2018年3月14日 18時) (
レス) id: c68c31e30a (このIDを非表示/違反報告)
ココナッツ(プロフ) - うわああああべにさんっ！うわああああ…(ワケわからなくてごめんなさい、汗)…好きですっ！ (2018年3月14日 15時) (レス) id: d0c3580366 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：べに
| 作成日時：2018年3月13日 0時
