【マギ】政務官殿と外交長官殿IV【ジャーファル】

130話　独り歩きの影 ページ9

◇


　なぜこうなったのだろう。

　どうして私がこんなことを…？


『チェックイン頼めるかしら。2人よ』

2人、と確認するカウンターの従業員は、カウンターを挟んで立つナターシャと私を順に見た。

「部屋はお1つでよろしいでしょうか？」

『ええ、もちろん』

　あぁ…頭が痛い

きらびやかなシャンデリアの下、豪華なロビーに私のため息は消えていった。


「…どうして二人の必要があるんだ」

いつもの官服ではなく慣れない服を着て、仕事とはいえ同僚と一泊するなんて。
　……勘違いされたらどうしよう

だがナターシャは全く気にしていないらしい。

『向こうがそう言うんだから仕方ないでしょ』

肩を竦めるナターシャの手には既に鍵があった。事前にオーナーから半強制的に渡されたと言っていた。

だがそれが下にまで伝わっていないのか、受付が「お部屋のご要望は？」と尋ねる。

『あら、オーナーが部屋は取っておいてくれたはずよ。私たち、彼に指定された日に来たんだし』

「そうでしたか、お部屋の番号は？」

『404よ』

「……現在あの部屋は使われておりません、お間違えないでしょうか」


受付の返事には少し間があった。
平然を装っている彼の一瞬の同様を、私は見逃さなかった。

『そんなはずはないわ。この前に夏黄文殿が泊まったもの。分かるかしら、あの煌の…』

「ああ、1週間程滞在されたお方ですね。確認しますので少々お待ちを」

会釈し従業員は奥の部屋に戻ってゆく。
……おかしくはないか。

「ナターシャ、君部屋の番号ちゃんと覚えてるの？」

『失礼ね、ちゃんと合ってるわよ！』

むすっと不機嫌そうな顔で睨まれるけど、使われてない部屋の鍵をオーナーが渡すだろうか。

「にしても404なんて、あまり好まれない数字なのにね」

『縁起担がないだけじゃない？』

「あの、ナターシャ様」

声に振り返ると、年配の男がいた。杖を手に持ち白い髭と髪。老紳士という言葉が浮かぶ。

『オーナー、いらっしゃったのね』

「ナターシャ様にジャーファル様、来てくださってありがとうございます」

軽く会釈をした。
オーナーは人の良さそうな笑みを浮かべる。

「ここからは私に案内させてください。こちらへどうぞ」

「いや、けど今従業員の方が確認を…」

「大丈夫ですよ。さあ、参りましょう」

微笑み、促される。
少し戸惑ったが、私とナターシャは彼の後をついて行った。





*


「大変お待たせしました、ナターシャさ…あれ？」

「どうかしたのか？」

「あ、オーナー。それが……」

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