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164話 覆水盆に返らず ページ48

*


"『私に何が言いたいの』"

"「……ナターシャ様、よく聞いてください。貴女の部下に…」"

彼の言葉を記憶から追い出した。
信じてなんていない。どーせ犯罪者の戯言だもん。

だけどもしその過信が仇になってこの国がハメられたら?

私が捕まえたあのタミー・リドルは言ったらしい。
内通者の存在とアヘンに隠された大国を巻き込んだ計画を。

まだ計画は終わってないなら?この国には今煌からの皇族が2人も居る、また別の手を打つ気かも。
そう思うと私は、針を飲む覚悟をした。



 "覆水盆に返らず"


「ナターシャ、ナターシャー?おーい?……おいジャーファル」

シンが困った顔しつつ私を振り返るものだから、

「……何故そうすぐ私に」

空気読めよと意を込め大きく溜息をついた。
朝一の鐘が鳴って早1時間経った今、普段なら朝議が終わっている頃だが今日は少し長引いている。年明けと共に新人登用が待っているからだ。
だが、その間もナターシャは何処を見るでもなくぼうっとしていた。
頬杖ついて、窓の外を見つめて深刻そうにまゆを顰め。シンの声など届かないらしい。

「アイツ、悩み事でもあるんじゃないか?」

「なら私に聞かず本人に聞いてくださいよ、ご自分で」

何故私に振るんだ。

「なんだよ、やけに突っかかるなぁ。ジャーファルくん怖ぁい」

「………」

「はは、怖」

この前、私と彼女の間で何があったかシンは知らない。いやこの中の誰も知らないだろう。
あれから、彼女は私と目を合わせようとしない。
道をすれ違えばまるで、視界に入ってないかのように振る舞われ、連絡に関しては彼女の補佐官が伝言を預かるようになった。
会話らしい会話なんてしていないだろう。それもそのはず、避けられているんだから。

だがそれも、仕方ない。
私はあの時間違えたんだ。


「朝議を延長し、このまま新人登用に関する会議に移らせていただきます。上位二官に当たる方は謁見室への移動を」

進行役の声で各自移動が始まる。椅子の引く音に気づいのか、ぼうっとしていたナターシャはあくび一つして席を立った。私と目が合った瞬間動きが止まり、即座に顔を逸らされると駆け足で逃げて行く。

「なんだアイツ」

「…さあ」

まるで出会った頃の昔に戻ったようだ。
いや、昔の目が会えば噛み付き合っていた頃の方がいいのかもしれない。

彼女が何を考えているのか、さっぱり分からないぐらいなら。

終話 気にした者負け→←163話 因果は車の輪の如く



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むす(プロフ) - 彩覇さん» 一気にですか…!?すごい量ですよね?ハマってもらえて嬉しいです、ありがとうございます!笑 これからも頑張りますね、彩覇さんも気詰めない程度にたまには休憩なさって下さい、応援しています笑 良いお年を! (2016年12月29日 17時) (レス) id: af8ca94d98 (このIDを非表示/違反報告)
彩覇 - 初めてまして、彩覇です。受験生なのに今日、この外交長官殿シリーズを一気読みしたバカです…。すごい良い作品で夢中になってしまいました!続編も期待してます!良いお年を!! (2016年12月29日 16時) (レス) id: 17626c4f76 (このIDを非表示/違反報告)
むす(プロフ) - けーじろーさん» ですよね!私も褒めてもらいたいです、貴重な意見をどうもありがとうございました笑 これからもよろしくおねがいします、では良いお年を! (2016年12月28日 23時) (レス) id: af8ca94d98 (このIDを非表示/違反報告)
けーじろー(プロフ) - 2がいいです!ジャーファルさんに褒めてもらいたい…♪←いつも更新お疲れ様です!これからも応援してます♪よいお年を! (2016年12月28日 9時) (レス) id: 3429c2729d (このIDを非表示/違反報告)
むす(プロフ) - どなさん» ですね、余り楽しい感じでは無さそうな…!波乱の予感がする5ですがどう転ぶか、見守ってあげてください。では、良いお年を! (2016年12月27日 20時) (レス) id: af8ca94d98 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:むす | 作成日時:2016年7月23日 8時

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