154.5話 高瀬舟の行き着く先 ページ37
◆
『………いや、そもそも変でしょ。なに気ぃ回してんの私、末期?末期よね…』
「大きな独り言喋ってる方が末期だぜ!」
『あ?』
銀蠍塔の庭で、ベンチに腰掛けていた私の気分は天気とは裏腹に最悪。苛まれていたのは嫌悪感だった。
変な所を意識している自分が嫌だし、意識されようとしている自分はもっと嫌。
…シャルルカンのせいで調子が狂う。私は別にどうだっていいのに!!
そんな苦悩が口から漏れたのが冒頭の独り言だった…はずがなぜか返事をされた。
不機嫌なままの目つきで振り返れば、"彼"は私を見るなり息を飲んだ。
「あ"ナターシャ様!?すみません出過ぎたことを申しました!」
すぐさま頭を下げたこのキレのいい動きといい
この武官、見覚えが。
『アナタ……ルトノフでしょ。アレンの友達の』
「はい!覚えてくださったんですか!光栄です!」
ゆっくり上げた顔には人の良さそうな笑みを浮かんでいた。……ホントにアイツの友達なのかしら。そう思うくらいなんか、笑顔が爽やか。それに加えて金髪、鎧。太陽を反射しなお眩しい。
負のオーラなんて感じられないくらい、ポジティブ感に溢れてる。
『…アナタって悩みなさそうよね』
断りを入れて隣に座った彼に言う。
「はは、言いますねー。意外と俺は悩んでますよ?」
『へえ?じゃあアレンがアナタの話をする時の代名詞が脳筋だって事は内緒にしとくわね』
「ったく、悩みの種の癖して酷いっすよねえ」
さっきと同じく爽やかにくすくす笑うルトノフだけど、何処か完全には笑ってない。
『アレンに悩んでるの?』
やっぱり、笑顔が強ばった。じっと見つめていれば観念したかのように、彼はポツリと口を開く。
「…いえ。これでも一応、アイツは俺の弟だと思ってますから信用してます。アレンは違う。
けど、他の子達だって、皆いい子だって分かってるんですよ。だから俺は疑いたくないってゆーか。……ああ、なんて言えばいいんすかね…」
『ねえ、何の話してんのよ』
ギュッと彼の膝の上に出来ている拳は堅く握られていた。苦しそうに眉を寄せて、案外深刻な悩みなのかしら。少し不安になって顔を覗き込めば、今度は悲しそうに眉を下げて私を見つめてくる。
「……ナターシャ様」
『なに?』
「……小耳に挟んだ話が本当か調べてほしいんです。で、もしその通りだったら…俺から報告があります」
『いいけど、誰から聞いた話よ』
「気にする程の奴じゃありません。ただのブリャーチの戯言ですよ」
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むす(プロフ) - 彩覇さん» 一気にですか…!?すごい量ですよね?ハマってもらえて嬉しいです、ありがとうございます!笑 これからも頑張りますね、彩覇さんも気詰めない程度にたまには休憩なさって下さい、応援しています笑 良いお年を! (2016年12月29日 17時) (レス) id: af8ca94d98 (このIDを非表示/違反報告)
彩覇 - 初めてまして、彩覇です。受験生なのに今日、この外交長官殿シリーズを一気読みしたバカです…。すごい良い作品で夢中になってしまいました!続編も期待してます!良いお年を!! (2016年12月29日 16時) (レス) id: 17626c4f76 (このIDを非表示/違反報告)
むす(プロフ) - けーじろーさん» ですよね!私も褒めてもらいたいです、貴重な意見をどうもありがとうございました笑 これからもよろしくおねがいします、では良いお年を! (2016年12月28日 23時) (レス) id: af8ca94d98 (このIDを非表示/違反報告)
けーじろー(プロフ) - 2がいいです!ジャーファルさんに褒めてもらいたい…♪←いつも更新お疲れ様です!これからも応援してます♪よいお年を! (2016年12月28日 9時) (レス) id: 3429c2729d (このIDを非表示/違反報告)
むす(プロフ) - どなさん» ですね、余り楽しい感じでは無さそうな…!波乱の予感がする5ですがどう転ぶか、見守ってあげてください。では、良いお年を! (2016年12月27日 20時) (レス) id: af8ca94d98 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:むす | 作成日時:2016年7月23日 8時