152話 血より薄けど清い水 ページ32
◆
オーナーの黒い瞳はずっと、自分の手のひらに重ねられた二つを見つめていた。
カギに葉巻。
偶然だとしても必然だとしても、現実味がない話。
困った様な乾いた笑みが彼の口から落ちた。
「はは、…そんな上手い話がありますか」
「さあ。私は本人じゃありませんから、真実の所は知りません」
「……」
ただ、と。
少し落胆じみたオーナーにジャーファルは言う。
「そうだったらいいな、とは思いますけどね」
「それが当てつけでもですか？」
「ですが葉巻の銘柄に関しては図星だったのでしょう？
なら私がここに寄越された意味は、その鍵を渡す為なのだと思っていますよ。
貴方の先代への想いが強いほど、先代から貴方への想いもまた、強いと思いますから」
「なんだよそれ…」と小さく吐いたオーナーの声は少し震えていた。
ギュッ、とその手のひらが葉巻と鍵とを握り締める。
***
『ねえ、アンタいつ気づいたのよ』
シンドリアを照らす朝日の差す帰り道。眩しい日差しに目を細めながら私は聞いた。
後ろを振り返ると、まだホテルのエントランスに2代目の姿が見える。目が合ったのが分かったのか、くすりと笑われた。
"「此度はありがとうございました。お次はお客様としていらっしゃってくださいね」"
別れ際もそう言って微笑んでいたっけ。
『こうして見るとちゃんとしたオーナーよね。出会い頭に鏡蹴ってきたのにさ』
「大切な父親の事となるとカッとなりやすいんでしょう。お陰で腕が切れたよ」
『え、ウソ』
隣で歩いていた彼の手を引き袖を捲ると、赤い縄の間に一直線に切れた跡があった。何もしないで放置していたせいで血が固まってる。
『…なんで言わないのよ』
「それほど痛くなかったから」
パッと手が離れて行った。そういえばジャーファルは今回不運続きよね。ペンは壊れるわ傷は出来るわで。
『結局私達が2人でここに来た意味ってなんだったのかしらね』
「さあ。それは先代に聞かないと分からないな」
それもそっか。
真実は本人のみぞ知る、ってやつね。
はぁ、と息をついた所でふと違和感に胸をつかれた。……待ってよ、冷静になればなるほど背筋が凍る。
『ねえ……私達、先代と話したわよね』
「ええ」
『手紙も来たわよね』
「2代目も本人の字と封蝋だと」
『……一年前に死んでたの？』
「……」
『私達ホントにオバケに…』
「いやそんなことないでしょ。有り得ない」
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むす(プロフ) - 彩覇さん» 一気にですか…！？すごい量ですよね？ハマってもらえて嬉しいです、ありがとうございます！笑 これからも頑張りますね、彩覇さんも気詰めない程度にたまには休憩なさって下さい、応援しています笑 良いお年を！ (2016年12月29日 17時) (
レス) id: af8ca94d98 (このIDを非表示/違反報告)
彩覇 - 初めてまして、彩覇です。受験生なのに今日、この外交長官殿シリーズを一気読みしたバカです…。すごい良い作品で夢中になってしまいました！続編も期待してます！良いお年を！！ (2016年12月29日 16時) (レス) id: 17626c4f76 (このIDを非表示/違反報告)
むす(プロフ) - けーじろーさん» ですよね！私も褒めてもらいたいです、貴重な意見をどうもありがとうございました笑 これからもよろしくおねがいします、では良いお年を！ (2016年12月28日 23時) (レス) id: af8ca94d98 (このIDを非表示/違反報告)
けーじろー(プロフ) - 2がいいです！ジャーファルさんに褒めてもらいたい…♪←いつも更新お疲れ様です！これからも応援してます♪よいお年を！ (2016年12月28日 9時) (レス) id: 3429c2729d (このIDを非表示/違反報告)
むす(プロフ) - どなさん» ですね、余り楽しい感じでは無さそうな…！波乱の予感がする5ですがどう転ぶか、見守ってあげてください。では、良いお年を！ (2016年12月27日 20時) (レス) id: af8ca94d98 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：むす | 作成日時：2016年7月23日 8時
