150話 aster is you ページ30
◇
2代目のオーナーはとても先代を、彼にとっては育ての父をとても大切に思っているのはこの404号室を封鎖した事からして分かっていた。しかもこの部屋を先代を見習い毎日欠かさず掃除し、終いには観音開きを利用しクローゼットに仏壇を作っているのだから。
仏壇といい髪や瞳の黒さといい、彼からは東洋を感じさせる。だから役には立てなかった手前、少しでも彼の意を汲もうと思ったのに。
カーン、と
幽霊噂で囁かれた鐘の音を、2代目は抜け抜けと鳴らしてみせた。
「ははは、冗談は無断宿泊だけにしてくださいよ。これ、鐘じゃなくて鈴。仏具ですよ」
黒い器のような"鈴"を指して笑う2代目だが、仏教という習慣のない私もナターシャも確信している。
このせいだ。絶対に。
「てか早く正座してくれません?で、手ぇ合わせるんです。そう、では黙祷」
*
『…カマライズ…アンタ、ギャグ一線と蔑まれ虐げられてきたウチにやっと訪れたシリアスをよくもぶち壊してくれたわね』
「知りませんよ」
「私達は結局なにをしにここへ呼ばれたんでしょうか…」
「知りませんって」
場所は変わり再びテーブルに座らざるを得なくなった私達。夜明け前と違うのは窓から見える景色に太陽が顔を出した事と、この険悪な空気か。疑問だらけのこの状況はモヤモヤする。
「この事を彼に気づかせる為に、私達は呼ばれたんでしょうか」
『ねえ、それだとカップルのくだりは完璧作り話よね?私とジャーファルがここに来た意味は!?』
「だから知りませんよ」
はあ、とため息を吐いた2代目は、胸ポケットを漁る。きっとまた葉巻を吸うんだろう。
案の定彼は葉巻を取り出したが、口に運ばずただ見つめるだけだった。
"ASTER IS YOU"
星はあなた。
葉巻に刻まれた銘柄に視線が惹き付けられた。二代目は葉巻自体をどこか遠い目で眺めてポツリと吐く。
「俺達には計り知れない事なんていくらでも起こるんですよね。
こんなぶっとい葉巻がいつか指より細くなってポケットサイズの箱で売られてるとか、今じゃ信じらんないし、それと同じ事ですよ」
『何が言いたいのよ』
「はは、分かりません。まあどんな偶然も運命だと受け入れなきゃ、ですよね」
何故か苦く笑う2代目に、ナターシャの分かりやすい眉は余計に寄りだした。
「ま、とにかく。幽霊の原因も分かった事ですし、義父の意志通りに俺はこの部屋を営業再開する為に動くつもりです。そう出来るのはあなた方のお陰だと思ってますよ、俺は」
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むす(プロフ) - 彩覇さん» 一気にですか…!?すごい量ですよね?ハマってもらえて嬉しいです、ありがとうございます!笑 これからも頑張りますね、彩覇さんも気詰めない程度にたまには休憩なさって下さい、応援しています笑 良いお年を! (2016年12月29日 17時) (レス) id: af8ca94d98 (このIDを非表示/違反報告)
彩覇 - 初めてまして、彩覇です。受験生なのに今日、この外交長官殿シリーズを一気読みしたバカです…。すごい良い作品で夢中になってしまいました!続編も期待してます!良いお年を!! (2016年12月29日 16時) (レス) id: 17626c4f76 (このIDを非表示/違反報告)
むす(プロフ) - けーじろーさん» ですよね!私も褒めてもらいたいです、貴重な意見をどうもありがとうございました笑 これからもよろしくおねがいします、では良いお年を! (2016年12月28日 23時) (レス) id: af8ca94d98 (このIDを非表示/違反報告)
けーじろー(プロフ) - 2がいいです!ジャーファルさんに褒めてもらいたい…♪←いつも更新お疲れ様です!これからも応援してます♪よいお年を! (2016年12月28日 9時) (レス) id: 3429c2729d (このIDを非表示/違反報告)
むす(プロフ) - どなさん» ですね、余り楽しい感じでは無さそうな…!波乱の予感がする5ですがどう転ぶか、見守ってあげてください。では、良いお年を! (2016年12月27日 20時) (レス) id: af8ca94d98 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:むす | 作成日時:2016年7月23日 8時