143話 目から鼻へ抜ける ページ23
◆
「君は湯浴みしないの」
『こんな何が起きるか分かんない場所で出来るワケないでしょ。アンタ寛ぎすぎなのよ』
「いや、鏡には幽霊が映るというから確認も兼ねたんだ」
信じらんない。…オバケ、居るならどうか罰当たりの方に行ってください。
心の中で願いつつ、口からはあくびが出る。
結局の所、今の今まで何も起きず、テーブルに腰掛けているだけで何時間も過ぎた。豪華な部屋が勿体ないくらい、こじんまりした過ごし方をしている。
ふと、ジャーファルが時計を見上げた。
「…もう2時か。東洋では丑三つ時というんだっけ」
『草木も眠るってヤツ?』
「ええ。…この時間まで幽霊が出ないとなると、もう別の手を打つ他ないね。
知ってるかい、ナターシャ。幽霊は一人でいる方が出るらしい」
『は?待って待って、私をここに1人にさせる気!?』
急に腰を上げた彼の袖を慌てて掴んだ。そんな薄情な事ってある!?
『ビックリなんだけど!?アンタもっと私の事大事に思ってくれてんだと思ってたわ!』
「大事か大事じゃないかの問題じゃなく…
『そうでしょ!会ったら私、死ぬわよ!
大体、なんでわざわざ幽霊が出るようにしなきゃなのよ!!』
「一回聞くんだ」
袖を掴んでいた手を剥がされ椅子に座らされた。見下ろしてくる彼の口からはため息が落ちる。
「いいかい、君は今回のこの件については報告書を書かなければならない、そうだろう?そして、それを依頼主であるこのホテルのオーナーに提出する必要がある」
『ええ』
「君の前には夏黄文殿が1週間、この部屋に滞在したとか。だが何も異変はなかった。
だがそれでは納得出来ずに、オーナーは鍵まで送付して半強制的に君をここに呼び出したんだ。
分かる?今回も異変がないなら日を改めてまた宿泊しろと言ってくるってことですよ」
『は、ウソでしょ…』
「その可能性はある。だから、今の内出来ることはシラミ潰しにやっていくのがいい」
『だからって私を一人にするって!?』
じゃあ何の為の2人よ!
オーナーはカップル客の前に幽霊が出るって言ってたのよ!
そんな不満全部込めて眉を寄せ、彼をねめつけるがジャーファルは薄く笑った。
「大丈夫、何かあったらすぐ来ますから」
『…すぐ来れる保証なんてないでしょ』
「そうでもないよ、シンや君にはよく言われるんだ。地獄耳ってね」
『嫌味か』
「それに私の所に現れる可能性もあるから確率は半々だ。
君は運いい方でしょう?大丈夫だよ」
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むす(プロフ) - 彩覇さん» 一気にですか…!?すごい量ですよね?ハマってもらえて嬉しいです、ありがとうございます!笑 これからも頑張りますね、彩覇さんも気詰めない程度にたまには休憩なさって下さい、応援しています笑 良いお年を! (2016年12月29日 17時) (レス) id: af8ca94d98 (このIDを非表示/違反報告)
彩覇 - 初めてまして、彩覇です。受験生なのに今日、この外交長官殿シリーズを一気読みしたバカです…。すごい良い作品で夢中になってしまいました!続編も期待してます!良いお年を!! (2016年12月29日 16時) (レス) id: 17626c4f76 (このIDを非表示/違反報告)
むす(プロフ) - けーじろーさん» ですよね!私も褒めてもらいたいです、貴重な意見をどうもありがとうございました笑 これからもよろしくおねがいします、では良いお年を! (2016年12月28日 23時) (レス) id: af8ca94d98 (このIDを非表示/違反報告)
けーじろー(プロフ) - 2がいいです!ジャーファルさんに褒めてもらいたい…♪←いつも更新お疲れ様です!これからも応援してます♪よいお年を! (2016年12月28日 9時) (レス) id: 3429c2729d (このIDを非表示/違反報告)
むす(プロフ) - どなさん» ですね、余り楽しい感じでは無さそうな…!波乱の予感がする5ですがどう転ぶか、見守ってあげてください。では、良いお年を! (2016年12月27日 20時) (レス) id: af8ca94d98 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:むす | 作成日時:2016年7月23日 8時