141話 落人は薄の穂にも怖ず ページ21
◆
「私はなんて言った。君が呑む前、なんて言った?」
『ええ?なんだっけ、あはは忘れちゃった』
「くれぐれも潰れるなと言ったんです!」
ピシャリと言い放ったジャーファルはお怒りらしく、隣で深いため息を落とす。聞いてるこっちが疲れそうだ。ていうか、疲れた。息を切らす私が顔を上げれば、まだまだ先の長い階段が続いている。
『もーなんで4階なのよぉ!階段なんて疲れるだけじゃない!』
「部屋が4階なんだ、無茶言わないでください。それに、あのご年配のオーナーですら手すりも使わず登っていましたよ?」
『それ、ひっかるのよねぇ。だってあのオーナー、前から足悪くしてたのよ?なのに「なら!
足の悪くない君は文句言わずに登れるわけだ、さあ行くよ」
吐き捨て1人でツカツカと登っていく彼。ちょっと酔っちゃったくらいでなによ!不満に歯がなった。
『ジャーファル!』
「うるさいよ酔っぱら…」
『ん』と両手を伸ばしたら「は…」と呆れの混じったキョトン顔されたから、片腕は下げた。
『ウソ、引っ張って。もう私限界だから』
けれどジャーファルは微動打にしない。その場に座り込んだらやっと、彼は踊り場から降りて来た。おまけにため息も一緒だけど。
『わー、ジャーファルさんってばやっさしぃ』
「ああもう、だからあれほど…!」
強く手首掴まれ引かれて階段を登ること、2階、3階……
やっと4階に辿りつき、部屋の前まで来た時、カギを取り出したジャーファルの動きが止まった。
「今、見ましたか」
『なにを』
彼が視線で差すのはたった今部屋に入った宿泊客。見ても分からず私は首を傾げた。
「鍵が、私たちの物とあの客とでは形が違いました」
『え、だってカギでしょ?バカなの?』
「…違う。部屋番号の書かれた木札のこと」
『んなのどーでもいいわ!
…まさかジャーファルさん、そうやっていちゃもんつけるのはビビってるからじゃないの?
政務官殿ともあろうお方が』
「はあ、なわけないだろう」
『それはどうだか』
肩を竦めて彼の手からカギを引っ取ると、カギを差し込みドアを開けた。
先に広がるのは真っ暗闇。
しばらく留守にしていた部屋、勿論ランプはついておらず、開けていた窓から吹き込む夜風が不気味にカーテンを泳がせていた。
…やけに寒く感じる。ごくりと唾を飲んだ。
『…ほら、カギは開けてあげたわよ。ジャーファル、お先にどうぞ』
「まさか外交長官殿ともあろう君が。怖いんですか?ただの暗闇が」
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むす(プロフ) - 彩覇さん» 一気にですか…!?すごい量ですよね?ハマってもらえて嬉しいです、ありがとうございます!笑 これからも頑張りますね、彩覇さんも気詰めない程度にたまには休憩なさって下さい、応援しています笑 良いお年を! (2016年12月29日 17時) (レス) id: af8ca94d98 (このIDを非表示/違反報告)
彩覇 - 初めてまして、彩覇です。受験生なのに今日、この外交長官殿シリーズを一気読みしたバカです…。すごい良い作品で夢中になってしまいました!続編も期待してます!良いお年を!! (2016年12月29日 16時) (レス) id: 17626c4f76 (このIDを非表示/違反報告)
むす(プロフ) - けーじろーさん» ですよね!私も褒めてもらいたいです、貴重な意見をどうもありがとうございました笑 これからもよろしくおねがいします、では良いお年を! (2016年12月28日 23時) (レス) id: af8ca94d98 (このIDを非表示/違反報告)
けーじろー(プロフ) - 2がいいです!ジャーファルさんに褒めてもらいたい…♪←いつも更新お疲れ様です!これからも応援してます♪よいお年を! (2016年12月28日 9時) (レス) id: 3429c2729d (このIDを非表示/違反報告)
むす(プロフ) - どなさん» ですね、余り楽しい感じでは無さそうな…!波乱の予感がする5ですがどう転ぶか、見守ってあげてください。では、良いお年を! (2016年12月27日 20時) (レス) id: af8ca94d98 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:むす | 作成日時:2016年7月23日 8時