136話 once upon A time ページ16
◇
『アンタも知ってるでしょ？私とシュウの居た国のこと』
そう切り出したナターシャはティーカップを両手で包み込んだ。湯気の立つカップの中身は、先程、彼女を落ち着かせようと私が淹れた紅茶だ。
ナターシャと言えば紅茶。それはもうイコールで繋がっている気さえする。
そういえば、
彼女の出身国も紅茶が有名だった。
"ONCE UPON A TIME"
『…あの国はね、前はここみたいに豊かな国だったわ』
遠い顔をして海を眺めている彼女には、祖国の記憶が蘇っているのだろう。
だが私には、彼女がどんな光景を思い浮かべているのかまでは分からない。
まだ商会だった頃、私達があの国へ辿りついたのは内戦直後の、目を背けたくなるくらいに酷い光景でしかなかった。
建物は全て瓦礫に成り果て。焼けた匂いと鉄臭さ。生者と死体が並んで眠り、飢えて枯木のような腕をした行く宛もない孤児が溢れかえる。
そんな、光景だけだ。
『…アナタ達が来たのは内戦後だったから知らないでしょうけど、あの内戦はね、国の勢力を2分する程大きかったのよ。蜂起したのは王族だったから。泥沼化して長く続いたわ。国民の5人に1人が死んだ』
「一つの言葉でまとめると軽すぎるでしょうが、…酷い戦争だったのですね」
『ええ。その通りよね』
苦く笑ったその顔は、いつも強気なナターシャには似合わない。何故か彼女が申し訳無さそうな顔をして、ため息と共に言葉を落とす。
『シュウが孤児になったのもそのせいよ。
シュウはね、元は東洋出身でさ、私の祖国には家族と商売をしに来ていたのよ。
だけどその戦争に両親が巻き込まれて殺されちゃった。
だからシュウは故郷に帰れなくなったわ。っていうより、何処が故郷なのかも分からないと思う』
「……そう、だったんですね」
ナターシャとシュウとは長い付き合いだ。だが、こうして腹を割った話をされると、自分は彼らを知っているようで何も知らなかったんだと気付かされた。
と、同時に考えさせられるのが、ナターシャも私の過去を知らないということ。
…知らない？
いや、彼女が自分の話をしないのをいい事に、自分も敢えて過去の話を遠ざけていた。
もし望める立場なら、私は知られたくない。
私は、自分の犯した罪を、知られたくない。
………なんて、虫のいい話すぎるな。
彼女が私を人を殺してきた暗殺者、殺人者だと知った時、どう思うのだろうか。
どんな反応をするにしろ、今までと同じでは居られるはずがない。
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むす(プロフ) - 彩覇さん» 一気にですか…！？すごい量ですよね？ハマってもらえて嬉しいです、ありがとうございます！笑 これからも頑張りますね、彩覇さんも気詰めない程度にたまには休憩なさって下さい、応援しています笑 良いお年を！ (2016年12月29日 17時) (
レス) id: af8ca94d98 (このIDを非表示/違反報告)
彩覇 - 初めてまして、彩覇です。受験生なのに今日、この外交長官殿シリーズを一気読みしたバカです…。すごい良い作品で夢中になってしまいました！続編も期待してます！良いお年を！！ (2016年12月29日 16時) (レス) id: 17626c4f76 (このIDを非表示/違反報告)
むす(プロフ) - けーじろーさん» ですよね！私も褒めてもらいたいです、貴重な意見をどうもありがとうございました笑 これからもよろしくおねがいします、では良いお年を！ (2016年12月28日 23時) (レス) id: af8ca94d98 (このIDを非表示/違反報告)
けーじろー(プロフ) - 2がいいです！ジャーファルさんに褒めてもらいたい…♪←いつも更新お疲れ様です！これからも応援してます♪よいお年を！ (2016年12月28日 9時) (レス) id: 3429c2729d (このIDを非表示/違反報告)
むす(プロフ) - どなさん» ですね、余り楽しい感じでは無さそうな…！波乱の予感がする5ですがどう転ぶか、見守ってあげてください。では、良いお年を！ (2016年12月27日 20時) (レス) id: af8ca94d98 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：むす | 作成日時：2016年7月23日 8時
