あの2人また別れたってさ【佐久早聖臣】 (ページ4)

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第四話ページ4

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何のつもりでわざわざ会いに来たのか聞かなくても分かっている。

これで何度目だと思ってるんだ。

でも絶対私からは何も言わない。

「…帰ってきてくれ」

漸く口を開くと、絞り出すような声で私に言った。

〝帰ってきてくれ〟

私が短大を卒業したと同時に私達は一緒に住んでいた。

彼が所属する会社の地域にわざわざ就職を決めて、「古い賃貸は嫌だ」「公共交通機関を使いたくない」と言って聞かない彼の意見を尊重したちょっと高い1LDKのアパート。

別れたあと、私は持てるだけの荷物を持ってそこから出て行ったのだ。

「…悪かった。許して」

そっと優しく抱きしめられる。

仕事終わりだよ私。汗も掻いてるし。

普段外では手も繋がない。

付き合いたての頃に1度、手を繋ごうとしたら本気で嫌がられた。

あれは結構傷付いた。

なのに、こういう時だけそんな事をしてくる。

まったくずるい奴なのだ、佐久早聖臣という男は。

「……はぁ…わかったよ…」

その言葉に反応した彼の腕の力が強くなる。

ずっと彼に対して抱えていた苛立ちが消えていく。

『いやでもさ、毎度毎度別れるくせに何でまたヨリ戻すのよ』

黒尾。それは私がこの男の事が好きだからだよ。

嫌いになりきれない。

だから別れてもまた必ず私の前に現れて柄にもなく縋るように謝る彼を許してしまう。

今度こそ変わってくれるんじゃないかって期待してしまう。

私も私で救いようがない奴なんだよ。

馬鹿でしょ、ほんと。

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