第一話 ページ1
.
「俺お前の事好きなんだけど」
「え?」
高2の夏休み前。
何の前置きもせず、佐久早聖臣に学校帰り告白された。
「好きなんだけど」
聞こえてないとでも思ったのだろうか。
淡々ともう1度その言葉を口にする彼。
なんとなく気付いてはいた。
最近私に対する接し方が変わったからだ。
「連絡先教えて」「部活終わるまで待ってて」「家まで送る」「お前好きな奴いたりする?」など。
あの潔癖性で人に興味の無さそうな彼がまさかとは思ったものの、彼と仲の良い(?)古森君に「本当Aちゃんの事大好きだよね」って言われ確信になった。
そして私も、そんな佐久早聖臣の事をいつの間にか好きになってしまっていた。
「でも佐久早潔癖だよね」
「俺は慎重なだけだ。…てか、今関係なくない」
関係あると伝えれば、何が言いたいんだと言わんばかりに眉間にシワを寄せた。
確かに告白されて第一声がこれは、彼には酷だったかもしれないと今では思う。
しかしちゃんと私にも理由がある。
「他人と手繋げないでしょ? 手も繋がない恋人なんておかしな話だよ」
ウイルスや菌を嫌い、人との接触を嫌うこの男だ。
もし付き合ったとしても、恋人らしい事なんて出来るはずがない。
だったら付き合ったところでだろうと思ったのだ。
なのに
「お前ならいい」
そっと私の手を握り、そう答える彼に心底驚いた。
まじかあんた。
この時点で答えは出ていたのに、私の往生際は悪くて、彼を確認する質問は止まらなかった。
「いやでも、ハグは出来ないでしょ」
そう言えば答えるように抱きしめられる。
「でも、流石にキスは…」
その言葉に何も答えず動かない彼。
まあそれもそうか、流石にキスは例え好きでも出来ないだろう。
暫く沈黙が続いた後「嘘だよごめんね試す様な事言って」そう言おうとした私の口に、柔らかい感触がした。
「お前なら…いい」
そう言って少し顔を赤らめる彼がまず信じられなかった。
しかし真実だ。
もう確認する事などない。
そもそも私もこの男が好きなのだから、ここまで意思を示してくれた彼をこれ以上試す必要など、どこにも無かった。
「……で、返事は?」
「…いいよ」
こうして、私達は付き合う事になった。
.
1263人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:林檎 | 作成日時:2020年6月19日 16時