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そう、困るけど、嫌ではない。
ただ先走った関係にいまさら追いついた気持に戸惑っているだけ。

治くんは優しいから、ずっと待ってくれているのだ。


「治くん」
「ん?」
「治くんは、わたしにコロッといったって言うたやんか」
「おん」


付き合い始めた時の彼の言葉を思い出す。あの言葉は、素直に嬉しかったのだ。
いい加減、わたしも素直にならないといけない。


「……その、コロッと行く感覚が、わたしにはなかったんや」
「ああ、」


半ば吐息交じりの相槌に、思わず彼から目を逸らす。
おでんの容器のふちに残った辛子を箸でつつきながら、零した。



「わたし、ちゃんと治くんのこと好きや」



声が震えたのを、寒さのせいにしたかった。


「ん」
「コロッとやなくて、じわっとやった」


ドキドキしている。心臓がうるさい。恥ずかしくて、治くんの顔が見られない。
訥々としか紡げないわたしの言葉を、彼はゆっくりと頷きながら聞いてくれた。


「わたし、怖かってん。先に関係ありきやったから、どうにも素直になれんかったし、ただ流されただけの情かもしれんって思ったら、はっきり言葉にできんくて」
「うん」
「でもな、治くんと一緒におるの、幸せやねん」


治くんの方を見られないまま、向かい合う彼の肩に、額を寄せた。
そんなわたしの頭にするりと手を回した治くんは、そのままぽんぽんと後頭部を撫でる。

そのしぐさに急に緊張の糸が途切れて、変に落ち着いていた心臓が暴れだす。
にわかに目の奥にほとばしる熱さが、わたしにうまく声を出させてくれなかった。


「好きや、……ごめん、ほんまに、ごめん」
「十分や、ありがとうな、A」


治くんの嬉しさをにじませた声が頭上から降ってきて、それ以上何も言わなくても全部伝わるのかもしれないと、また彼の優しさに甘えそうになる。
凝りもせず彼の優しさに甘えるわたしを、脳のどこかで理性が止めた。

もう、甘えちゃいけない。


「今まで治くんの気持ち、蔑ろにしてごめん」
「ん」
「治くん、わたし治くんのこと好きやから、やから……」


俯いていた顔を上げる。生ぬるいのが頬を伝う感触がした。
彼の瞳を、今度はわたしが射抜いてやりたい。その空気に、視線で縫い付けてやりたい。

冷たい冬の空気を肺いっぱいに吸い込んで、治くんを見つめた。


「わたしと、付き合って」

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ひな(プロフ) - 満月さん» お返事遅くなってしまい申し訳ありません!ご注文お待ちしております(゚∀゚)師匠だなんて恐れ多いですが、宣伝していただく分にはぜんぜん構いません。私でよければ是非、、、 (2018年11月19日 14時) (レス) id: b56c38f9b7 (このIDを非表示/違反報告)
満月 - ひなさん» 勿論!これからも応援し続けますよ!あっ、後…1つだけお願いがあって…私の作品に、このシリーズの宣伝と、linkを貼らせては貰えませんか?出来ればネッ友として…((( 訳:ひな様とネッ友的な人…?になりたい(?)です。と言うか、師匠として宣伝したいです! (2018年11月17日 2時) (レス) id: 62008578a5 (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - 満月さん» それは大変失礼いたしました……アカウントが持てるようになった頃、それでもまだ欲しいと思っていて下さったら、その時はよろしくお願いします。こちらこそコメントいただけてとっても喜んでおります。これからも応援していただけたら嬉しいです! (2018年11月15日 22時) (レス) id: b56c38f9b7 (このIDを非表示/違反報告)
満月 - 成る程…ご丁寧な、説明有り難う御座います!垢が必要なのですね…残念です(泣)実は私、DSから来ていて…スマホ持ってないし…小学校((卒業したら..中学に行ったら買ってくれるので…それまでの辛抱かな…DSにメアドと無いし((それと、ひなs…良い人ですね(感動…) (2018年11月14日 22時) (レス) id: 62008578a5 (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - 満月さん» お支払いはクレジット決済かコンビニ・銀行での振り込みとなります。詳しくはpixivのboothの説明の方をご覧ください。それでもご不明な点ございましたら、またこちらかボードにお気軽にご連絡下さいね!お手数おかけしてしまい申し訳ありません(;;) (2018年11月13日 1時) (レス) id: b56c38f9b7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ひな | 作者ホームページ:https://twitter.com/pp__synd  
作成日時:2018年9月14日 21時

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