恋を運んできたのは猫。【まふまふ】

19.後悔 ページ21

Aさんが来るまで僕は高架線の下でうずくまっていた。

「あ、来た」

偶然ここにいたかのように声をかける

ずっとここにいたなんて知られたら、優しい彼女のことだ、「家来てください！寒いでしょう！」とか今付けているマフラーを僕に巻いてくれるだろう。でも、万が一、ストーカーだと間違われて、「気持ち悪い」って思われたらどうしよう、耐えれない


必死に謝った、自分でも何を言っているのか分からないくらい


それにまた「かわいい」と寒いからか他の理由からか頬を赤く染める彼女は可愛い。そう、彼女の方が圧倒的に素敵で可愛いし、綺麗だ、なのに

「そんなこと言うならAさんの方が可愛いと思うけどな、」

そうやってつぶやくとさっきとは比べものにならないほどに顔を染める、耳もだ。

じっと見つめてみると、目の下にクマができていた

右手を彼女の左の頬に沿わせて、親指でクマをそっとなぞる

手のひらと親指以外の指が彼女のきめ細やかで、白い肌を感じる

親指は彼女が瞬きをするたびにまつげが当たる


無防備だなぁ、

その無防備さは危うい。
何かありそうで危うい。

守ってあげなくてはと加護欲が湧く

他ではない自分が、この、無防備な、人を…

そんなことを考える、不純で、心が真っ暗な僕に貴方は

「そんなことないですよ！話しやすいし、落ち着くし、優しいし、素敵で、心が澄んでるような気がします！」
などというのだ。
僕の本当を見せたら、貴方はなんていうのかな
…


君を守るのは僕でありたいなんて、かっこいいセリフ、言ってみたいけど、この気持ちがまだ分かっていないんだ、もう少し、心を整理する



居酒屋の個室はAさんとの距離を狭くしてくれる

同じ空気を吸って吐いてする

心の中ではドキドキなのに、それを顔に出さないように必死で、


ニットは女性らしい体のラインを強調して、ジーパンのめくられた裾から見える細い足首は、唯一体の中で見える肌かもしれない

そんな彼女の足元のボルドーのピンヒールは余りにも似合っていて、少し大人びて見える


まだずっと一緒にいたかったから寝たふりをした。彼女からは酔っているように見えたみたいでアタフタしている

そのときに僕の携帯が鳴った、この着信音はそらるさん、迎えに来てくれるだろうけど、彼女は一人で帰れるだろうか、やっぱり眠ったふりはやめて家まで送ればよかった

そんな後悔が頭に浮かんだ

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