9話 ページ24
智君は8月28日に日本を発つことが決まっている。一緒に過ごせる時間は3週間もない。
私は智君と、その先の未来の話は一度もしたことがなかった。私は想像するのが怖いから。でも智君はどうなんだろう。私との未来がそこにないから･･････？
｢･･････私の存在はこれからの智君に負担になるんじゃないかな。優しい子だから、私がこっちで辛いと、きっと、智君も辛くなっちゃうし。そうなったらニューヨークでの生活を邪魔しちゃう気がするの。恋人は･････向こうで一から築いた方がいいんじゃないのかな｣
｢本気で言ってる？｣
｢それに最初の約束は撤回になってないから｣
｢最初の約束？｣
｢夏休みの間の友達｣
私が言うと、翔君は目を丸くした。
｢それに拘束力はないよ。破っても、誰も何も言わないし。むしろもう友達じゃないでしょ？ この関係が友達だって言うなら俺も姉さんと今すぐ友達になりたい｣
テーブルの下で黄色の色鉛筆を握っていると、その手を櫻井君が上から包んできた。
｢翔君･････｣
まっすぐな眼差しが私に質問していた。
自分の気持ちに嘘をついてはいけないと。本当の気持ちはどこにあるのと。
でも私は何も言えなかった。
黙っていると翔君は手を離し、嘆息すると、くるりと表情を代えて言った。
｢智君と旅行に行くんだって？ ニヤニヤしてるから追求したら吐いてさ｣
｢うん｣
色鉛筆を見つめながらふと気になっていたことを尋ねた。
｢私ばっかり智君のこと占領しちゃってごめんね。みんなにとっても、智君と過ごせる最後の夏休みなのに｣
｢ハハハ。あんなに楽しそうな智君を見てたらなんも言えねぇし。それに姉さんが仕事の時は俺らも相手してもらえてるから大丈夫だよ。･･････智君さ、秘密主義じゃないけど、今まで自分の女がどうしたこうしたって話すタイプじゃなかったの。でもね？ 姉さんのことは嬉しそうに話すんだよ。ばあちゃんみたいな言葉をまた言っただとかさ｣
｢やだもう･････｣
言いながら胸が熱くなる。
智君･･････。
智君が愛しいと思うほど、その手を離す日が来るのが怖くなる。
このまま仲良くしていていいんだろうか。
いきなりその手を離して、私は堪えられるの？
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 559人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ao(プロフ) - 智恵里さん» こんにちはー！行っちゃいましたね。さて、次回が最終回です。二人はどうなるのか！最後までお付き合いのほどよろしくお願いいたします！ (2019年9月22日 9時) (
レス) id: 0d583270dc (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - peru/旧perutc3010さん» こんにちは！次回でいよいよ最終回です！ツラタンでごめんなさい。でも最終回にご期待ください！今後ともどうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございます。 (2019年9月22日 9時) (レス) id: 0d583270dc (このIDを非表示/違反報告)
peru/旧perutc3010(プロフ) - 別れなんて辛すぎます(T_T)でも、読まずにはいられない…はぁ、ツラタン (2019年9月20日 23時) (レス) id: 52470abde8 (このIDを非表示/違反報告)
智恵里(プロフ) - やだ〜行かないでー(泣)(´；ω；`) (2019年9月19日 12時) (レス) id: 82290003ef (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - mizunaさん» mizunaさんこんにちはー！言われて気づきました。ほんとだ！みんな年下だーって。違和感なさ過ぎですね!? 妄想好きなので、どういう集まりか考えちゃいましたよ。一人でウフウフ笑ってます。次のCMも凄く楽しみです。期待を裏切りません！ (2019年9月19日 11時) (レス) id: 0d583270dc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ao
| 作成日時：2019年9月2日 17時
