(前編)赤狼舞踏 20000hitお礼文 ページ37
「大丈夫ですか、ふぶさん」
俺は戦場の隅、壊れかけた建物を背に座り込むふぶさんに声をかけた。
「…あ、ナノ…。平気平気、ちょっと頑張りすぎて眼がおかしいだけ」
軽く笑ったふぶさんだが、いつものような明るさはない。
小耳に挟んだ程度ではあるものの、ふぶさんの視力強化は脳への負担が大きいそうだ。
スナイパーとして、建物の影から姿をのぞかせる敵を早期発見し対処するために精神を削り、見えすぎる眼は更にそんな精神を蝕む。
サングラスを外して、眼を押さえ込むふぶさんにそっと歩み寄りながら、俺は口を開く。
「たまには休憩挟みながらにした方がいいですよ。眼は一生ものですし」
「それはそうだけど…。でも、みんなが頑張ってるのに、俺だけなんかサボってる気になるじゃん? それに、ナノとかの方がずっと危ない事してるでしょ?」
そう言いつつ、手の隙間からちらと覗かせた青の眼が、俺の腕に巻かれた包帯に向けられる。
つい先程あった戦闘で負った怪我だ。弾丸を捌ききれず、腕をかすめた。
「平気ですよ。こういうのが俺の仕事ですし」
苦笑してそう返せば、ふぶさんに苦笑を返され、怪我はしないでねと釘を差された。
「それは分かってますよ」
「そう? それならいいんだけど」
再び笑いながら、ふぶさんが眼に当てていた手で眉間を揉んだ。
青の眼は閉じられたまま。
(……俺が見たい青、見えない)
少しだけ残念な気持ちになりながら、なんとなく俺はふぶさんのサングラスに手を伸ばす。
真っ黒だ。これを俺がかけて戦場へ行けば、きっと不意を突かれるだろう。
視界不良。こんな世界の中で、ふぶさんは戦う。
「……ふぶさん」
「ん? なに、ナノ………?」
眉間を揉んでいた手を離した所へ、俺はふぶさんの眼に手を当てる。
やや動揺した声で、ふぶさんは俺に問う。
「ど、どうしたの? ナノ」
「…いえ、なんとなくです」
吃驚して見開かれた眼が、俺を捉える。青の眼が、俺を射抜く。
「…それなら、いいんだけど…」
やんわり笑ったふぶさんに笑みを返しながら、俺は手を離し、立ち上がった。
「じゃ、戻りましょうか。調子も戻ってきたみたいですし」
「…ナノ、俺が隠れてるの知ってて来た?」
「さて…どうでしょうね」
俺は、にっ、と笑みを浮かべて先を歩く。
慌てて追いかけてくるふぶさんを肩越しに見ながら、口角をあげた。
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皆様ありがとうございます!
もう暫くお付き合いください!
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長閑(プロフ) - 夏煌さん» 読んできただきありがとうございます!初期愛称の「ナノ」を日本での単位にすると「塵」でして、その名前を呼んでくれるmsspと、愛称としてつけてくれたふぶさんへの敬愛の意味でございます。…そんなに…深い意味は…ない(;´∀`)ハハッ← (2015年2月15日 16時) (レス) id: b1fbb6f323 (このIDを非表示/違反報告)
夏煌(プロフ) - 全て読ませていただきました!質問なのですが主人公が使っている塵とはどんな意味があるのでしょうか?理解力なくてすいません(>_<) (2015年2月8日 23時) (レス) id: 185900a38c (このIDを非表示/違反報告)
紫雨(プロフ) - 2度目の完結おめです!! 次回作、楽しみにしてます! (2015年1月17日 18時) (レス) id: 426cfae2bb (このIDを非表示/違反報告)
麗琥−りく−(プロフ) - 完結おめでとうございます!!楽しく読ませてもらいました!!次回作も読ませていただきます!! (2015年1月17日 16時) (レス) id: 76a46eac77 (このIDを非表示/違反報告)
翼羽 - 完結おめでとうございます!とても面白くて最後までいっきに読んでしまいました。msspと軍パロは大好きでしたのでニヤニヤしながら読んでました(笑)でも最後はすごく感動させられて涙ボロボロ流してました;;次回作も頑張ってください!応援してます! (2015年1月12日 14時) (レス) id: 1b255c9260 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:長閑 | 作成日時:2014年12月29日 22時