【ＭＳＳＰ軍パロ】赤狼舞踏・光華【男主】

見慣れた紅が、笑う　　ｓｉｄｅ　ＦＢ ページ22

あれ、おかしいな。
　部屋を覗いたが、ナノがいない。
　今日はきっくんの式典があるから、呼びに行くねって言っておいたけど、忘れてるかな？
　駆け足で廊下を進むと、見慣れた背を見つけた。
「あ、ナノいた！」
「…ふぶさん」
「よかったー、迎えに行くって言っておいたけど、いなかったから」
「……あぁ、そういえばそうでしたね。すみません」
「いいよいいよ、合流出来たし」
　やんわりと表情を緩めたナノに言葉を返しながら、俺は笑った。
　ただ、式典だというのにいつも通りの武装をしているナノに、内心で首を傾げる。
「いやぁ、きっくんもついに昇進かぁ。えおえお隊長は昇進蹴っちゃうし、俺も昇進蹴っちゃったし、あろまとＰ*suKEは医務管理系に正式に引っ張り込まれることになって、それでも蹴って、もうてんてこ舞いだね」
「あはは…ふぶさん達にも来てたんですね、昇進通知」
「うん。でも、昇進したらｍｓｓｐも一緒になりにくいし。…きっくんは親の手前、蹴れなかったみたいだけど。昨日もずっと渋ってたよ。昇進」
「……そうですか」
　やっぱり、みんなでいたいもんね。
　そう言ったら、ナノが「そうですね」って言いながら笑った。
「…ナノの自然な笑顔、初めて見たかも」
「……そうですか？ …そうかもしれませんね。初めて、ちゃんと笑ったかもしれません」
　はは、とまた軽く笑って、俺も頬を緩めた。
「まー、ようやく戦争も終わったし、俺らは自警団に戻れるし、万々歳だよね。平和バンザイ」
　そう言った俺の隣で、ナノが進めていた足を止めた。
　顔を俯かせたまま、ナノは俺に声をかけてくる。
「……あの、ふぶさん」
「どうしたの？ お腹痛い？」
「…いえ、そうじゃなくて」
　くす、と笑ったナノがこっちを見て、笑顔を苦笑に変えた。

「俺、きっくんの式典には行きません」

　その言葉に、俺は息を飲んだ。

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