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F:ペースは平常ですか ※F 『赤狼』 ページ8

きょとん、としたAの顔がそこにある。
 さり気なく伸ばした手が不意に触れてしまって、俺は思わずそのままAの手を握った。
 だけど動搖の言葉も何もないから、俺の方が不安になる。
『……』
 いつもなら、「あの?」くらい言ってくるのに。
 困ったような表情で、俺に言葉を求める声くらいかけてくるのに。
(なんでいまに限って無言?!)
 せめて何か言ってくれなきゃ、俺のほうが照れてくる。
 思わずやったことだし、ここからどう、とかそんなの何もない。
(ど、どうしよう。とりあえず何か言ってごまかそうかな)
 Aからそむけていた視線をAへ向ければ、Aはじっと俺を見ていた。
 濃紫の眼に見つめられ、俺は思わず喉で言葉を詰まらせる。
 やばい、マジで何も言えない。
「あ、あぁ」
「?」
「も、ごめん。俺の方がギブ。ごめん、急に掴んだりして」
「…いえ、気にしてないですけど」
 それはそれで傷つくかな! ちょっと気にして欲しかったかな!
 くそぅ、Aに意識してもらうには道が遠いか…
 なんて思いながら俺が軽くため息を吐けば、Aが困った顔で俺を見てくる。
「あの…、ふぶさん? 大丈夫ですか?」
「あ、うん…。Aの方が大丈夫?」
 俺がそう問えば、Aはどうしてですか、と問うてきた。
「どうして、って…そりゃ、嫌だったかなぁ、って…思って」
「いえ、そんなことはないですよ?」
 またきょとん、として俺を見つめてくるA。あぁもう、どうしてそうふわふわしてるのかな。
 俺が再びため息を吐けば、Aが口を開く。
「だって、ふぶさんですし。嫌なんて事ないですよ」
「…そ、そう? それならいいんだけど」
 安堵の息をこぼし、俺はAに視線を向ける。目があったAはやんわりと微笑んだ。
 俺が口を開こうとした途端、あろまからの通信が入って反射的に言葉を呑み込む。
「ま、またあとでね」
「はい」
 ひらひらと手を振ってくれたAに手を振り返し、ばたばたと走って行く。
 後ろでAが両手で顔を覆っていた事なんて、俺は気づきもしていなかった。

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 大抵のことではペースを見出されない赤狼さんですが、不意打ちに弱いせいで見られていない所で赤面します
 目の前で照れてあげてもいいと思うんですけどね(切実)

E:お隣並び ※E 『隣人』→←A:二階から目薬 ※A



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長閑(プロフ) - 芋木姉さん» いつもありがとうございます。どうか気長にお付き合い下さい。読んでくださってありがとうございました! (2015年11月7日 19時) (レス) id: 92e94bc51d (このIDを非表示/違反報告)
芋木姉(プロフ) - こちらこそ楽しい小説をありがとうございます。ちなみに、IDは変わっていますが、本物のゼリー体です苦笑 (2015年11月4日 23時) (レス) id: b8ed3af9ec (このIDを非表示/違反報告)
長閑(プロフ) - 芋木姉さん» 更新が停滞しているにも関わらず、ありがとうございます。楽しんでいただければ幸いです。読んでくださってありがとうございました。 (2015年11月4日 0時) (レス) id: 83e5a293f5 (このIDを非表示/違反報告)
芋木姉(プロフ) - お久しぶりです。元ゼリー体です。ハロウィンネタ大好きなので、隣人きたときテンション上がりましたw白桜も楽しみにしています。 (2015年11月2日 23時) (レス) id: b8ed3af9ec (このIDを非表示/違反報告)
長閑(プロフ) - ゼリー体さん» 毎度更新が遅くてすみません、『隣人』更新しました。ご期待に添えていれば幸いです。リクエストありがとうございました! (2015年8月12日 2時) (レス) id: 83e5a293f5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:長閑 | 作成日時:2015年5月26日 1時

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