6冊目 ページ6
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「黛くん、いつもパンなの？」
「…晴れてる時に屋上で食べる時は。それ以外は食堂」
連絡先を交換し終えてからそんな事を聞かれた。
面倒だと思いながらも答えてやると
彼女は自らのお弁当を見ながら「作ってこようか」と。
「…」
「一応、恋人だし…みたいな」
コイツは、何を言ってるんだろう。
俺と本当に恋人になった気にでもなってるんだろうか。
一度ため息をついてから重たい口を開く。
「あのな。今日は恋人でも明日は違うだろ」
「!…そう、だよね」
コイツはガッカリしたような表情をするけれど、
俺はそういうラノベみたいなストーリーは嫌いじゃない。
仮に"何"しても次の日には元通りで後腐れもなにも無いし。
そんな事を考えながらパンを平らげるとゴミをポケットにしまってから持ってきていた本を開く。
隣でお弁当を食べる微かな音をBGMに俺は本の世界に入りこんだ。
とはいえもう読み終わる所だったので10分ほどで読み終わり
本を閉じて隣を見るとお弁当が半分ほどになっていた。
「はー…パンもうひとつ買ってくればよかったな」
わざとらしくそう言ってみると、俯いていた顔がパッと俺を見た。
そして少しだけ表情を綻ばせながらに「た、食べる…？」と。
「お前は良いのかよ」
「勿論、その、食べて欲しい」
そう食い気味に言うので俺は少しだけ考えた後で(人1)に顔を寄せると口を開けた。
「あ」
「え」
「食わせろっつってんだよ」
「！？」
やっと意図に気付いた彼女は慌てたように卵焼きを一つ箸で摘むと
手を震わせながら顔を真っ赤にして俺の口元に近付けた。
「……あーん」
「…ん」
口に入れられた少し冷たい卵焼き。
だし巻きだろうか、噛むとジュワッと溢れて美味い。
ああ、これが"小さい頃から家が隣の清楚系美少女幼馴染"とかだったらどんなに良かったか。
何でよりによって出会って二日のコイツなんだ。
「美味しい…？」
「美味い」
「良かった…!この卵焼きね、私が作ったの」
コロコロ表情が変わるヤツだと、思った。
彼女が出来たらこんな感じなのかと思いながら
そういえばコイツも一応は彼女だったなと思う。
…彼女、か。
「そっちの唐揚げも食いたい」
「うん、勿論…えへへ」
俺も今日くらいは彼女持ち気分を満喫したっていいよな。
文字通り自慢出来るような彼女では無い、けれど。
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作者名：由麻 | 作成日時：2024年3月26日 0時
