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4冊目 ページ4

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翌朝。欠伸を漏らしながら寮を出るまで
(人1)Aの存在は頭からすっかり抜けていた。

門の前で待つその姿を目にしてやっと「そうだった…」と思い出して頭を抱える。



俺は、今日一日はコイツの恋人なのだ。



「あ、おはよう…」



控えめな笑顔。朝だからだろうか。
夕方に比べて表情がよく見えた。

短く返事を返してからラノベを開いて歩き出すと
彼女はまた控えめに俺の腕に触れる。

それだけで会話も無く学校まで辿り着いた。



「朝練あるから」


「あ、だからこんなに早いんだ。何部だっけ?」


「お前……俺の事が好きとか言っといて部活も知らねぇのかよ」


「ごめん…」


うあ蒼あたとたたうた
なんですぐ謝るんだ、コイツ。

まあ別に見て欲しくもないし教える義理もねぇが
言わないと後で余計に面倒くさそうだ。

あー、彼女ってもっと良いもんだと思ってたよ。



「バスケ部。絶対来んなよ」


「何で?」


「来ても面白いもんなんてねぇから。
あと放課後も部活で帰り夜だから一緒に帰れるとか思うなよ」



昨日だって体育館の整備があったから休みだったってだけで
恋人とはいえごっこなんだからコイツにそこまでする義理もない。

その考えに至ると俺は返事も聞かずに足早に部活へと向かった。



.





朝練を終えて教室に入ると意識してクラスを観察する。

そこには確かに(人1)Aが居た。

俺の事なんて見えていないかのように、
普通にクラスの友達と楽しそうに会話している。

本当に同じクラスだったんだなと思いながら席に着くとラノベを開く。

あともう少しで読み終わるから
そしたら昨日買ってもらった続きを読もう。



「……」



…恋人。恋人らしい行動って何だ。
わかんねぇ。彼女なんて出来た事ねぇんだよ。
俺は自分優先な奴だから、自分より相手を大切にしたいと思う気持ちなんざ分からねーし。

これ俺がおかしいのか。

だって部活あるから一緒に帰るとか無理だし……
何、休み時間にいちいち話したりとかすんの?
俺そういうキャラじゃねぇし、普通に嫌だし
そもそも話す話題もねぇよ出会って一日だぞ。

でも今日一日とはいえ、ラノベを買って貰ったのだから
恋人でいなければいけない。



「……めんどくせぇ」



ラノベを閉じると机に突っ伏して目を閉じる。

…そもそも、(人1)は俺のどこに惚れたんだ。
俺なんかのどこに。俺より良い奴なんてその辺に居るだろ。


ごっこでも


恋人って、難しい。

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作者名:由麻 | 作成日時:2024年3月26日 0時

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