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16冊目 ページ16

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俺はキセキの世代や無冠の奴らのように化け物ではない為、
アイツらのように居残りなんてしない。

なので練習が終わるとさっさと体育館を出て
部室で着替えて帰る支度を整えた。

そして部室を出ると待ち伏せしていたようで(人1)がそこにいた。



「帰ろ」


「……ああ」



仕方ない。今日は恋人だからな。

そう言い聞かせて学校の外に出ると
例によって腕にくっつかれるのを感じながら
月光に頼ってラノベに読み耽る。



「ねえ、私とラノベどっちが好き?」


「ラノベ」



即答で口から出た。



「だよねー……」



何だそのめんどくせぇ彼女みたいな質問は。
これガチの彼女とかに答えてたら殴られてた気がする。

…いや、彼女なら、ラノベより好きになるもんなのか。


わかんねぇ。



「黛くん」


「何だ」


「ぎゅうってして」


「断る」



やべぇ、また口から反射で……。
チラっと(人1)を見ると俯いて今にも泣きそうに目を潤ませていた。

俺はため息をつくと、まあ今日は恋人だしな
と言い聞かせて立ち止まると本を鞄にしまう。



「ん」



そう言って腕を広げると(人1)は目を見開いて
勢いよく俺の腕の中に飛び込んできた。

それを受け止めると(人1)は俺の胸に顔を埋めて
そのまま背中に腕を回してきた。

…………ちょっと待て、忘れてた。

高三にもなって恥ずかしいこと承知の上だが
女子に抱き締められた事も抱き締めたこともねぇ。

何だこれ、手どこに持ってけばいいんだ。
背中か?頭か?肩か?っつーか女子ってこんなに小さくて柔らか……。



「……はぁー……」



落ち着け。収まれ。俺の心臓。相手は認識して間もない女だ。
その女は嬉しそうに俺に抱きついて擦り寄っている、が

これは向こうからやってくるイベントの類。
ならば俺はただ受け流せばいい。

即ち、コイツが満足するまで黙って待っていよう。


.


5分ほどで(人1)は満足して俺から離れた。

それからまた俺は月夜を頼りにラノベを読み、歩く。
(人1)も俺の腕に手を置く。

いつも、(人1)は俺が読むのを邪魔しないように
多分意識して控えめに腕に触れていた。

お陰で俺も気兼ねなく本の世界に入り込めた。



「黛くん、寮着いたよ」


「……ん」



(人1)はそう言って立ち止まると腕を離した。
俺は一瞬だけ本から視線をあげてまた視線を文章に戻した。



「じゃあまたな」



寮に入りながら一度も振り返らずにそう言った。



「……うん、またね」



今日も特に何も無いまま。

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作者名:由麻 | 作成日時:2024年3月26日 0時

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