12冊目 ページ12
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それから、お昼をそれぞれ買ってから学校の屋上へ入る。
休日の屋上に人なんて居る訳もなく貸切状態だった。
適当に腰掛けるとお昼を広げて食べ始める。
「黛くん、その唐揚げおいしい？」
「普通」
「普通かあ。貰っていい？」
「……」
俺の手元にはコンビニの五個入りの唐揚げ。
爪楊枝に刺さった食べかけのソレをチラッと見て
一瞬だけ迷ってからそれを(人1)の口元に差し出した。
「ん、食えよ」
「!…あ、ありがと」
顔を真っ赤に染めながら一口で唐揚げを全部口に入れた(人1)は目を逸らして咀嚼していた。
「…関節キス」
「っ」
からかってやると、更に顔を赤くして
完全に俺と顔を合わせてくれなくなった。
自分だって俺に食わせた事あるだろうに。
やられると照れるのかよ。
「…あ。今何時だ」
ふと午後からの部活を思い出して
そう呟きながら自分でスマホを確認する。
時刻は11時前。12時から部活なので
そろそろ一旦寮に帰って着替えないと間に合わない。
「そろそろ練習あるから帰んねーと」
「……あ、そっか……そうだよね」
スマホを仕舞うと残りの唐揚げを平らげて立ち上がる。
すると(人1)も自分の飯を平らげて立ち上がった。
それから二人で屋上を出ると階段を降りながら
背後で遠くなっていく足音を聞いて
段々と(人1)との距離が離れていく事に気付いた。
「……」
「……」
……ラノベ一冊で一日恋人。
ただ、その一日が必ずしも丸々一緒に居られるわけではない。
むしろ居られない事の方が殆どだ。……っつーか出会って間もない人間と2人っきりで長時間も過してたまるか。
とにかく、平日は学校はあれど放課後は部活だし土日も勿論のこと部活。
部活でヘトヘトになった後に会うなんて御免だ。
俺は別にどうでもいいが(人1)はそれに不満があるようで
俺との恋人としての時間が終わろうとする度に
口には出さないが寂しそうに目を逸らしていた。
「……はぁ」
立ち止まって振り向くと、
俺より三段上の階段で(人1)も立ち止まった。
「何なんだよ、言いたい事があるなら言えよ」
「……その」
三段上に戻ると「恋人、だろ。言えよ」と見下ろした。
(人1)は少し後ろに仰け反りながら泣きそうな顔になり
ボソボソと小さな声で「もっと……一緒にいたい……」と訴えてきた。
その言葉に俺は呆れてため息をついた。
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作者名：由麻 | 作成日時：2024年3月26日 0時
