32-バッドタイミング ページ33
.
「_ユウちゃん…お願いがあるの」
「え?」
今日ユウちゃんがバイト先に来てくれて良かった。
私はあの後もバイトがあったし、早く戻らないと人手が足りなかったから。
ユウちゃんに看病を任せた方が効率が良いしフロイド先輩も喜ぶに決まってる。
……それに私は、先輩に触れちゃいけない。
「_そんなに気になるなら、様子を見に行っては?」
「う、わ、あ…アズール……先輩」
いつの間に私の背後に立っていたんだろう。
突然声をかけられたものだから心臓が縮み上がった。
「…………だって、先輩は……ユウちゃんが…」
「そんな事言って、嫌われるのが怖いだけでしょう」
「…!」
「彼が心配だという理由以外に、行かない言い訳が必要なんですか?」
「それは……ない…です、けど……」
「だったら様子を見に行ってあげなさい。
今は落ち着いてますし離れても大丈夫ですから」
アズール先輩の押しに負けて、結局私は休憩室でエプロンを剥いでいた。
私が行ったってどうせ何もできないに決まってる。
……それでも、先輩に会いたいという気持ちだけは押さえられなかった。
「…新しいの、持っていこう」
多分今頃濡れタオルがぬるくなってる。
フロイド先輩の部屋に行く前にタオルを用意して、私は再び先輩の部屋の前に立つ。
すると、数センチ程その扉が開いていた。
意味なく、私はそこの隙間から中を覗きこんだ。
「……っ、」
「似合ってます、先輩」
「_……ん」
フロイド先輩の右耳に、ユウちゃんの手がかかっていた。
彼女が先輩の耳に触れて、赤いピアスを通す。
あまりにもゆっくりしたその動作を、私は硬直した体で凝視していた。
そして可愛い彼女が笑って、フロイド先輩も照れたように優しく微笑む。
耐えられなくなって、私は元来た道を逃げるように走り出した。
桶の水がたぷたぷ、と地面に染みを作る。
その様子が、私から溢れ出たフロイド先輩への気持ちに見えて。
店に戻って、人目もはばからず、アズール先輩の名前を呼んだ。
「Aさん、どうしたんです!」
「……っ彼に触れていい人は、もう居たんです…」
「はい?」
「彼の唯一は…私じゃ、なかった…!」
彼だけをずっと追いかけて、見てもらいたいと思ってたのに。
貴方が好きすぎて、もう辛い。
どうやったって、陸の女の子にはかなわない。
.
879人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ツイステ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おそらまめ(プロフ) - 森Shizuku?さん» コメントありがとうございます!高校生の時のあの青春って本当に素敵ですよね。その通りです、10話のタイトルはエースの言葉を代弁しました!何度もご覧いただき光栄です…。本当にありがとうございます! (2021年10月6日 11時) (レス) @page11 id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
森Shizuku?(プロフ) - このお話、何度読んでも素敵です。10話のところってエースの言葉なんですかね。深いし、みんなそれなりに高校生してるなと思いました! (2021年10月1日 20時) (レス) id: 7c267cd787 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 智真さん» 智真様、完結のお祝いありがとうございます!そうなんです、男子高校生をやってるフロイドくんが書きたかったんです…!そう言って頂けて感激です!監督生と2人の間に何があったかは、ご想像にお任せします(笑) (2020年8月26日 23時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 華のフロランタンさん» コメントありがとうございます!そう言って頂けて嬉しいです(^^)また何かご縁がございましたらどこかでお会いしましょう! (2020年8月26日 23時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - モブサイコ100さん» 最後までご愛読ありがとうございます!オクタは本当に素敵な3人なので絶大な人気ですよね…!ここは沢山素敵な作品がございますが、読者様にとってこの作品が心に残る作品であれば幸いです(^^) (2020年8月26日 23時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年8月3日 1時