33‐耳に光るピアス ページ34
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_それからおよそ2週間程経って、夏休み明け。
結局彼女はあの後、一度もバイトに行かなかった。
それをアズールは公認していたわけだが、不機嫌極まりない男が居たのだ。
「フロイド、起きて下さい。今日は夏休み明けの授業ですよ」
「………行かねえ」
フロイド。彼の耳には、いまだ赤いピアスが揺れている。
2週間、彼はいつAが来てもいいようにピアスを肌身離さず身につけ、毎日バイトに出勤していた。
あの気まぐれで飽き性なフロイドが、2週間、朝から晩まで。
その反動が、これだ。
「困りましたね…。あと5分以内に起き上がらないと置いていきますよ」
「………なぁージェイド……」
「何です?」
「A、何で突然バイト来なくなったの…」
無論、フロイドが監督生とひと悶着あったからなのだが。
この男は、まさかあの場面を彼女に見られていたとはつゆも思っていない。
ただ、健気に別の女性から貰ったピアスを嬉しそうにつけていただけなのだ。
……今のは大分御幣があるが。
「そんなに気になるなら、今日会いに行けばいいのでは?」
「……無理。やる気ねえ」
「まだAさんにそのピアスを見せていないでしょう?」
ぴく、とその言葉に分かりやすく反応するフロイド。
ベッドの中の指先が動いたのを片割れは見逃さなかった。
目を細めてネクタイを締めなおすと、ジェイドは靴をわざとらしく鳴らす。
「さぁフロイド。5分経ちましたよ。
僕は行きますが、貴方は」
「あと5分延長して」
先程とは比べ物にならない速さで布団から抜け出したフロイドは、約束通り5分後にはいつもの姿に早変わりしていた。
いつも通り、というより、いつも5分で支度している為、代わり映えは無い気崩した制服と寝ぐせのついたままの髪なのだが。
気まぐれながらも、健気なフロイドの姿に、片割れのジェイドは口元が緩まるのを抑えられなかった。
「_なぁー、Aはぁ?」
「ひっ、り、リーチ兄弟……ッ!」
「何で1年の教室に……!?」
__その日の昼休み。
夏休み明けの1年A組の教室は、とんでもない先輩の登場により騒然としていた。
自分たちに怖がっていつまでも情報を引き出せない事に段々苛立ちを隠せなくなってくるフロイド。
後ろでは何も言わずジェイドが腕を組んで見守っている。
「_あれ、フロイド先輩…」
「……カニちゃんじゃーん」
ここで漸く、救世主が現れた。
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おそらまめ(プロフ) - 森Shizuku?さん» コメントありがとうございます!高校生の時のあの青春って本当に素敵ですよね。その通りです、10話のタイトルはエースの言葉を代弁しました!何度もご覧いただき光栄です…。本当にありがとうございます! (2021年10月6日 11時) (レス) @page11 id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
森Shizuku?(プロフ) - このお話、何度読んでも素敵です。10話のところってエースの言葉なんですかね。深いし、みんなそれなりに高校生してるなと思いました! (2021年10月1日 20時) (レス) id: 7c267cd787 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 智真さん» 智真様、完結のお祝いありがとうございます!そうなんです、男子高校生をやってるフロイドくんが書きたかったんです…!そう言って頂けて感激です!監督生と2人の間に何があったかは、ご想像にお任せします(笑) (2020年8月26日 23時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 華のフロランタンさん» コメントありがとうございます!そう言って頂けて嬉しいです(^^)また何かご縁がございましたらどこかでお会いしましょう! (2020年8月26日 23時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - モブサイコ100さん» 最後までご愛読ありがとうございます!オクタは本当に素敵な3人なので絶大な人気ですよね…!ここは沢山素敵な作品がございますが、読者様にとってこの作品が心に残る作品であれば幸いです(^^) (2020年8月26日 23時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年8月3日 1時