元彼 ページ10
玄関を開けて又ため息がでる。
玄関には、ピカピカに磨かれた高級な男物の革靴。
俺の職業には、今の所必要ないものや。
「おかえり、洸」
欠伸をしながら、わざわざお迎えに来てくれた新に、ああ、ただいまと小さく呟く。
「家、何も食べるもんないわ」
「ええよ、わかってる。買って来た。」
一人分やけど、
新が家にまだいるんは何となくわかってた。
何度説得したって、夜にわかったって言ったって、結局朝になれば、『いってらっしゃい、洸』って、夜になれば『おかえり、洸』って何もなかったみたいに俺に微笑む。
今日はもう、自分ちに帰ってるとええなそんな気持ちを込めて、俺はわざと弁当を一人分買う。
「これ、美味しいらしいから、新、食べ」
「ほんまに？ええの？」
そう言って嬉しそうに、いただきますと手を合わせる新を心の底から怒れずにおる。
はぁ、聞こえないように１つため息をついて、一緒に買って来た缶コーヒーに手を伸ばす。
真っ黒なにっがいやつ。ほんまはめっちゃ苦手なやつ。
ある人にもらって、めっちゃ嬉しくて、勢いで飲んでみたら、その日の夜、新に思ってる事をいえた。
これを飲んで、いつも自分に気合いをいれる。
「ふぅ」
一気に飲み干して「新、後で話ししよ」と今日も諦めず言葉を絞り出した。
「うん、ええよ、それよりお肉、うまいで、洸も食べ？」
はい、あーんと自分の口まで大きく開けて俺の顔の前に持って来る新を俺はどうしても拒めなくて、控えめに口を開く。
「うん、美味しいわ」
なるべく表情を変えないように、新を喜ばせないように感情を隠して言葉を出した。
「やろ？」
そんな事気にも留めないで新は嬉しそうにもう一度あーんと、俺の前にお肉を差し出した。
‥
こんなほんわかしとって、弁当１つ買ってこれへん、そんな新が一流企業勤めてるってほんまなん？
顔やってほんま外人さんみたいに綺麗やし、スタイルだってモデルみたい。
今、目の前にいる新から、仕事中の姿は考えつかへん。
「‥不思議な子やな、新は」
新に入れてもらったお肉をモグモグしながら思わず呟いた。
「そう？普通やと思うけど」
「はぁ、もぉええわ、話しても何も変わらんし。兄貴にはええ加減、俺から連絡しとくわ。」
「洸、あかん」
俺がスマホを手に取ると、険しい顔で素早くその手をしっかりと掴む新。
いつものほんわかどこいったんや
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作者名：みぃ | 作成日時：2017年11月7日 2時
