魔王の一人娘になりまして。【オリジナル】

私の補佐 ページ5

手当てをしてもらっていると、さっき何か指示を出していた男の子が駆け寄ってきた。



「レティシア様、申し遅れました。今日から姫様の補佐をさせていただきます、アルドと申します。父エミールとはすでに顔を合わせていると伺っておりますが……」



　若葉のような髪色。その頭からは猫のような耳が二つはえている。モコモコしていて、触りたくなった。
　空みたいな瞳には私がうつる。

　片眼鏡がよく似合っていて知的な美少年だと思った。


　なんとなく優しげで、私を安心させようとしているような雰囲気があるが。




　私と同じくらいの年にしか見えないにも関わらず、空色の瞳は焦りと飢えにも似た貪欲さが伺えた。




　野心、という言葉がぴったり合う。



「姫様？」


　あ。


「ぼーっとしていました。すみません」
「恐れ入りますが、私への敬語は必要ありません」



　敬語いらない、か。
　なんだろう、姫だし姫っぽい言葉を使おうか。


　そんな風に遊んで姫だって実感が沸いたらまだ余裕が持てそう。


　それにしてもエミールねぇ。
　宰相さんは猫耳ついてなかったし、目は細かった。




　似ているのは髪色と顔つきかな？



「わかったわ。よろしく、アルド」
「はい」




　私がおそるおそるお姫様っぽい言葉遣いで話すと、アルドは微笑んでくれた。



　正解、ということだろう。
　少し恥ずかしいけど、しばらくこうやって話そう。



「私の補佐が必要なの？」



　王はともかく、姫に補佐って……何か仕事があるの？



「レティシア様は陛下の命令により、しばらくは状況の把握をしていただきますが、そのあとはまず女性貴族のトップに君臨する者としてのお仕事がたくさんございます」


　ほーん、なるほど。



　それって、中２の宿題よりキツかったりします？

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