うみとゆき -tkin- (ページ33)

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雄也side

そっと抱き寄せたその華奢な肩に
舞い散る雪をそっとはらった。

え…

雄｢……泣いてるの？｣

一瞬キラリと、その白い頬が濡れて
光ったように見えてそう訊いたら、

慧｢雪がたまたま落ちて溶けたの！｣

勘違いするなばーか、って強がってるけど、
本当にそうなのかな？

雄｢ごめんね？俺、バカだから伊野尾くんの全部、
分かってあげられない…｣

こんな時に、勉強をしてこなかった
過去の自分をいつも後悔するんだ。

黙って抱きしめる事しか出来ない俺に、
伊野尾くんはそっと小さく息を吐いて。

慧｢…俺はそういう高木が好きなの。

だから高木は今のまま、
ばかみたいに笑ってていいの｣

雄｢伊野尾くん…｣

.

あぁ、病み上がりの伊野尾くんを
こんな寒い場所に連れ出して
俺、なにやってるんだろう。

雄｢帰ろっか、伊野尾くん。｣

今更ながらそう気がついて、
すっかり冷たくなった細いその指を
自分の指に絡めた。

手を繋ぐと、なんでこんなにも温かく感じるんだろう？

慧｢…うん、｣

大好きな人の隣で、
振り返った潮風は冬の香りだった。

.