218 一緒に。 ページ18
何やらひとりだけ難しい顔で押し黙る勝呂を除き、他の皆皆は揃って返事をした。雪男は彼らの顔を一瞥すると、懐からじゃらりと鍵の束を取り出して、一つだけをつまんでみせた。
「僕は一足先に鍵で騎士団に戻って、池袋の戦闘に加わります。……では失礼」
「待ってくれ雪男、俺も一緒に行く」
充電器ごとスマホをポケットに押し込みながらAが言った。鍵を扉に差した状態で振り返りもせず、雪男は「そうですか」とだけ、一言。
雪男が開いた扉を一緒にくぐり抜ける。……最後にチラッと塾生のみんなを見たら、……燐が少し雪男の方を見て、複雑そうな顔をしていた。
だからといってなんの声をかけることもなく、Aはまた前を向いた。
◆
「……そろそろ頃合だ」
眼鏡をかけた髪の黒い女が、手にした端末の電源を落とし、ポケットにしまいつつ言った。
イルミナティでルシフェルを助けている、あの女である。
「ターゲットは池袋だ。お前の任務は、ターゲットを、……どんな手段を使ってでも。捕まえることだ、いいか」
「ああ」
腰に手を当てて、その"ターゲット"とやらの写真を見せる女に、相対した男は生真面目に頷いた。
赤い髪の毛を短く切った清潔感のある男だった。イルミナティの構成員に支給されている制服を、上までかっちりと止めている。彼は女から写真を受け取って、その写真が写す顔をじっと見つめた。メッシュの入った髪の毛。ツリ気味の目。祓魔師の位は名誉騎士、だったか。整った顔立ちの女だったが、当たり前に、見覚えのない顔だった。
光のない目で睥睨するようにして、男は写真をふたつに折りたたんだ。
「戦闘は避けろ。面倒になっても困る。ないとは思うが、貴様が万が一にも倒されたり、捕らえられるのも困る。俊敏に、穏便に、動けよ」
女の言葉に、男は内心おかしくなった。今から"ターゲット"を拉致するというのに、いくら言い換えても穏便という二文字に結びつきはしまい。
しかし、上司からの言葉に反論するなど、男の頭にはない。従順な犬のように頷くと、女は肩で切りそろえられた髪を払って、ふん、と鼻を鳴らした。この女の笑う顔など想像もできない。
「すぐに行け。駄弁っていたせいで遅れて捕まえられませんでした、では話にならんからな」
「了解」
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うたプリ大好き?(プロフ) - 続き気になっています この作品はもう更新されないのでしょうか? (2020年12月10日 3時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アオ | 作成日時:2017年12月5日 22時