201 スパイ。 ページ1
「……よく分かりませんね? あちら側のスパイをすることがなぜ、Aさんを守ることに繋がるのです?」
「彼ら、霊薬……エリクサーを開発しているでしょう?」
「そうですね」
「考えてもみてちょうだい? 死神なんて……"死"と"生"を司る悪魔なんて特に、研究素体にもってこいだと思わない?」
データは多ければ多いほどいい。死神などという悪魔は、まさしく彼らの研究材料にピッタリ。
遅かれ早かれ狙われるだろう。そう思った。
「……街角で名刺をもらったの。イルミナティのね。……名刺をくれたひと、私のことを知ってたの。祓魔師だって名乗った。なら、実験素体のストックとして、Aのことも狙うかもしれないと思ったわ」
神木家についてもそうだった。神木出雲が"使えなくなった"とき用のストック、代わりとして、神木つくもが狙われていた。
「……だから。私がイルミナティに入って、あの子への干渉を邪魔したり……少しでも、遅らせようとした。あまりやり過ぎたり、気付かれると……問答無用で実験台にされるから、あんまり出来なかったのだけれど」
「……スパイに入ったのは、理由はそれだけで?」
「ええ。あの子を守りたい一心よ」
「……いっそ恐ろしいですね」
妹に全てをかけているといっても過言ではないだろう。下手したら自分の身が危ないような場所にまで平気で飛び込むなど正気の沙汰とは思えない。
「今までは、ドクター……ええと、ドクター以外の言葉が見つからないのだけど……彼のところにいたわ。怪我をしていたから療養していたの」
「ああ、あの引き笑いの彼ですか」
「知ってるの?」
「Aさんをお連れしたので」
「……なるほどね」
「ちなみに、どこを怪我されたので?」
「……体に一直線……斬られたわ。逃げる時に、私の思惑なんてルシフェルはわかってたのでしょうね、イルミナティの構成員が襲いかかってきたの」
「それはそれは、我が兄ながら恐ろしい」
「本当ね。……それで、その傷もだいぶ治ったから、ドクターのところをお暇したの。飛び出してきちゃって、早くAに会いたい一心で学園のカギを選んだから、すっかり施錠されていることやセキュリティを失念してたわ」
「……なんというか、バ……いえ、ア……でもなく、考えなし……直感的、ですね」
「うるさいわ」
喋って乾いた口を、冷めたカモミールで潤す。
「では、出てくる時に時計も見なかった、と……それでこんな時間に学園内にいたのですね?」
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うたプリ大好き?(プロフ) - 続き気になっています この作品はもう更新されないのでしょうか? (2020年12月10日 3時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アオ | 作成日時:2017年12月5日 22時