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最後の一枚になった紙を折って、鞄を肩にかけると、彼もわたしに合わせて帰る用意をするもんだから
その間に折ってくれた紙を手に取って、教室を出ようとした時、クッと袖を掴まれたから進む足を止め振り返った
「一緒に帰らない、?」
少し照れくさそうにそう言った彼に伝染して、一気に体温が上がった。
戸惑いと、嬉しさでどうにかなってしまいそうで考えるより先にコクリと頷くと、よかった。と安堵した彼は、ふにゃりと笑った。
それから、職員室まで冊子を届けに行こうと2人肩を並べて廊下を歩いてる途中、彼はふと
「今日Aさんが残るって知ってたから残ったんだよね」
そう言った。
嗚呼、本当にこの人はずるい。
窓から吹き込む風が熱った体には気持ちがよくて、すぐ隣を歩く彼を見れるはずもなく下を向いて歩く。
好きが溢れ出して止まらない。
だって彼は、授業中ずっと首が座らずコクコクしてて眠たそうで。
家に帰ってすぐに寝たいはずなのに、私が残るからって残ってくれて
こんな暗くなるまで付き合ってくれた上に一緒に帰ろうだなんて、そんなの
期待しちゃうじゃんか、
『ありがと、やっぱ優しい』
「話したかったから」
『私と?』
「うん。ずっと」
そっか、と一言。
今の私にはその3文字を返すことだけで精一杯だった。
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作者名:タシア松 | 作成日時:2023年1月15日 21時