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○ A.side*
あまりに有り得ない現実に、ただ呆然とするしかない。
「……な、んで」
───探偵チームKZが、ここにいるの?
「俺が呼んだんだ」
「ふりょっ……くんが?」
こんなことで声が震えてしまうなんて、情けない。
「そ。俺、黒木って奴と知り合いだったから」
「えっ……?」
驚いて彼らから目を離して、不良くんに目を向ける。
「ほんとほんと。一回コイツとやり合ったの」
「……勝敗は?」
彼はニコッと笑って。
「俺の勝ち」
「すごっ」
私が会って来た中で、勝った人には初めて会った。
「……座れば? そこ、イスあるし」
代わって、不良くんは優しいような声から、冷たい、一気に氷点下のような温度まで下がった。
彼らは、現・KZメンバーで来ていたため、イスは7つ。
私に視線が集まるのが分かって、自然と目を伏せる。
……と、左手に温もりを感じて、恐る恐る顔を上げた。
そして、眼前には……不良くんが笑った、優しい笑顔。
「お前から、コイツらに何か言いたいこと、あるか?」
「……別に、何もないよ。今更」
声も、かなり素っ気なくなっているのが分かる。
……実際、
今更どんな顔を見せればいいのか分からないし、
どんな風に話せばいいのかも分からなかったから。
「……そっか」
不良くんはその一言を言っただけで、彼らに向き直った。
「じゃ、コイツの代わりに俺が言うわ。……観月愛菜、だっけ? とにかく、謝ってくんね?」
「……はぁっ?!」
ガタッ、と音をさせて立ち上がったのは、
随分と聞いていなかったように思える若武の声。
「なんで観月がっ……!!」
「ねぇ、ここ病室」
自分でも、すごく冷たい声音だと思う。
だけど、それ程許せなかったんだ。
「叫ぶつもりで来たんなら、今すぐ帰って。何を言うつもりで、何をするつもりで来たのか知らないけど。 ……文句があるのなら、彼じゃなく私に言って」
不良くんは、私の恩人だから。
彼が責められることは、絶対に間違ってる。
「───嗚呼、ごめん。言い方間違えたわ」
だけど、不良くんはその空気を意にも介さず、ニッコリと、怖いくらいに笑った。
「───コイツを突き落としたこと、謝って」
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未麗 - 不良君とアーヤの組み合わせが最高でした!!これからもがんばってください!応援してます!! (2022年9月3日 8時) (レス) @page46 id: c3880015a9 (このIDを非表示/違反報告)
阿修羅 - アーヤがクールな感じでいい (2022年1月10日 10時) (レス) @page7 id: 4820c0c437 (このIDを非表示/違反報告)
柚須 - Clock lock Works という歌みたいですね! (2021年5月7日 15時) (レス) id: 8119590feb (このIDを非表示/違反報告)
天奏 - アオさん» ありがとうございます!^_^ (2020年7月25日 14時) (レス) id: e765e8c7f7 (このIDを非表示/違反報告)
アオ(プロフ) - 最高でした! (2020年7月21日 1時) (レス) id: 0202dd951f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:天奏 | 作成日時:2020年4月13日 19時