僕らの世界2 (ページ29)

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流浪人　紅一点編ページ29

剣崎薫くん。

14年の人生の中で、何度こう呼ばれただろう。名前は合っている。でも、

私ー剣崎薫ーは、女だ。

男だか女だか分からない名前や、ショートカットの髪や、170cm近い身長のせいで、これまで幾度となく男と勘違いされてきた。勘違いされることはなくても、友達から「かっこいい」「ボーイッシュなファッション似合いそう」とよく言われる。

私は以前、女子バスケ部に所属していた。小学生の頃からやっていて、1年生の時は1年生で唯一レギュラー入りしていた。
それなのに。

「男子は向こうでやって」

3年生の先輩が引退して、1つ上の先輩の代になった途端、私は毎日のようにそんなことを言われるようになった。レギュラーメンバーとか、1年生とか2年生とか関係なく、全員に言われた。
私の居場所はここじゃないんだ。
そう思って退部したのが、去年の10月。

今、私は退部してよかったと思っている。新たな場所で、新たな方法で、やりがいを感じることができているから。
私は現在、流浪人として活動している。
最近結成された流浪人会の中で、女子は私ひとり。女子駅伝や女子ソフトボールの助っ人としてよく駆り出されている。
流浪人会は私以外みんな男子だけど、バスケ部にいた頃より楽しい。陸上部やソフトボール部の友達もできた。

狭いチームを飛び出したこと。
流浪人会に入ったこと。
私は後悔していない。

流浪人会は、私の「天職」なんだ。