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天星・3 ページ23

「天星はこんな弱いの弟じゃないって思ってたし、俺はあんなサイテーな奴は兄じゃないと思う」
浪越はきっぱりと言った。俺は泣きたくなった。吐き捨てるような言い方や、厳しい目に。
「だから、…こんなこと言ったら人聞き悪いけど、死んでも何も思わなかった。天星のために流す涙なんてないし」
ひどく冷たい言い方だった。兄のために流す涙がないなんて、俺にはとても考えられない。俺は、兄貴がいなくなったらどうなってしまうんだろう…と想像してみて、やっぱりやめた。もしも現実になってしまったら嫌だと思った。
「でも、天星の子分とか弟子…広海とかね。そういう人のアフターケア的なことはしてきた。天星が迷惑かけましたって意味で」
「浪越がいつも山本と一緒にいるのって、そういう意味だったのか?」
俺が尋ねると、浪越はYESともNOとも取れる素振りを見せた。
「最初は、そういう意味で話しかけた。今は友達だし仲いいからだけど」
それから、少し笑って続ける。
「今一番仲がいい奴は、元々は天星の弟子だったんだ。変な話だよな。天星のせいで話しかけて、それで仲良くなったんだから。俺にとってプラスだかマイナスだか分かんねえや、天星は」
俺も、そうだな、と頷く。
「所で、新海京也のことなんだけど」
「ああ、そうだ。
…天星が、本当にすみませんでした。横断歩道で安全確認をせずに飛び出した天星が悪いです。責任は俺が取ります」
急に改まった口調になって、俺はポカンとしてしまった。浪越は、構わず続ける。
「俺が、乱闘を阻止する。俺が盾になってでも、責任を取る。生徒会が暴力なんて絶対ダメだ。新海京也が荒れたのも、元はと言えば天星のせいだから、俺がどうにかする」
俺は、「そんなこと言うなよ」と止めたかった。でも、真っ直ぐな目を見て、何も言えなくなった。浪越の強い決心を、五感で感じだ。同時に、浪越天満は強い奴だ、と分かった。俺よりも、福島さんよりも、多分浪越天星よりも。

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設定タグ:青春 , 学園 , 友情   
作品ジャンル:純文学
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作者名:BLUE LEMON 綺 | 作成日時:2021年5月18日 20時

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