天星・2 ページ22
「…何かあったのか?」
俺は、うつむく浪越に尋ねた。浪越は、まあね、とあくまで笑顔で答えた。しかし、表情筋が引きつっている。
「あいつのこと、家族とは思えない。同じ親から、俺より先に生まれた人、以上のことは考えられないな」
「仲悪いのか?」
俺は、兄貴とは仲が良い方だ。寒い時はカイロ代わりにするし、暑くても何となく寄っていってしまう。兄貴も、多分それを嫌がっていない。俺は兄貴のことが好きだし、兄貴も弟離れできていない。春夏秋冬、いつでもベッタリだ。仲の良さ日本代表になれる自信さえある。
だから、浪越みたいな奴の気持ちってよく分からない。俺は喧嘩しても寝れば元通りだと思ってきたから、本当に嫌いとは思ったことがない。
「結構、悪いよ」
「それってどんな感じ?」
「なんか、空気がいつもイガイガしてる。よく殴られたし、蹴られたし」
浪越は、ほら、と言って額を見せてきた。1本の傷跡が、痛々しく残っていた。
「強制的に持たされた形見だよ」
肩をすくめる浪越は、顔で「もうウンザリだよ」と言っているみたいだ。
「天星は、とにかく喧嘩が強い。俺は弱いからって、ずっといじめられてた。物心ついた頃から、ずっと。親も手がつけられないような問題児」
「ひでえな」
「だろ。それで、俺のことはひどい扱いだったくせに、やたら子分やら弟子やらを取るんだ。天星自身、新海京也の弟子だったんだけどさ。山本広海も、元々は天星の弟子」
「へー、山本も?」
山本は、物腰柔らかで喧嘩なんてイメージは全くない。
「最終的には、俺たちは兄弟でも何でもないから関わるな、だよ。お互い兄弟じゃないって否定してたんだ。天星はこんな弱いの弟じゃないって思ってたし、俺はあんなサイテーな奴は兄じゃないと思う」
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作者名:BLUE LEMON 綺 | 作成日時:2021年5月18日 20時