【弱虫ペダル】じゃんけんに負けました。【黒田雪成】

３１ポン ページ33

黒田side






くっそ。


何やってんだ、俺。




心臓爆発すんじゃねぇの。


震えてんなよ、左手。








A「あ！ねぇ雪ちゃん！チョコバナナ食べたい！！」





なんでこいつはこんなに冷静なんだよ。


俺ばっか焦っちまって馬鹿みたいだろ。






「お前さっきから食い過ぎじゃね？」


A「だってお腹減っちゃったんだもん。あ、りんご飴！！」


「ったく…、笑」







自由奔放で振り回されるのは毎回俺だけど、こいつならまぁそれもいいかと思える俺は、この1年半でAの存在が自分の中でどんどんデカくなっていったことに気づいているからで。








A「おいひぃ。」







こいつのことが好きだって、自分でなんとなく自覚しているからだ。






「……、」


A「雪ちゃんも食べる？」


「いらね。」


A「えー、美味しいのに。」


「…はぁ、間接キスぐらい意識しろよ。」


A「え？…あぁ、…そっか。ご、ごめん。」







最近、Aは俺の前でよくこんな顔をする。



さっきタオルを渡した時もそう。


いつもみたいな馬鹿笑いじゃなくて。






頬を赤く染めて、こんなふうに潤んだ瞳を逸らして。


少し口を噤む。



そんな初めてみる表情を、可愛いとか思う俺って気づけばそうとうこいつにハマっていたんだな。とまるで他人のことのように思う。








「…どっか座るか？」


A「…うん。」








ここら辺のベンチは誰かが座ってるし、どっか神社の階段にでも腰を下ろすところぐらいあるだろう。





A「雪ちゃん…、」


「ん？」


A「…あのさ、」






俺が半歩先を歩いているから、Aの顔はよく見えない。






A「…やっぱり何でもない。」







ずいぶん間があってからAはため息混じりに言った。





「なんだよ。そういう言い方気になるだろ。」


A「…まだわかんないから言わない。」


「はぁ？」


A「あ、ここ座れるよ！」







へったくそにごまかしたAは、どうやらもうその話をする気はないらしい。

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