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そかー。じゃあ、もしかするとお父さんがお生まれになった頃には、もうツチノコさんがおそばにいたのかしら。
……だとしたら、お父さんにはもうなくてはならない方なんだね。

あーあ。妬けちゃうけど…そんなに深くて長い繋がりなら尊重するしかありません……ぐすん。


『そんでな、この畑はお社の土地に隣接してるやろ?神さんのご加護は受けやすいけど、神域に弾かれたモンがこっちに来る場合もある。せやし杜との合間にそういうモンの通路空けて、樹木結界を敷いてます。』

お父さんはツチノコさんを撫でながら、もう片方のお手手で畑の向こう側を指差した。

『樹木結界いうたら大袈裟やけど、古くから魔除けや言われてる樹木にもやっぱり力があるねんわ。木自身の生命力は勿論のこと、信仰を集めてきたもんちゅうのには力が集まる。人間がその力を意識して栽培すればするほど力を注入してきたようなもんや。

ここにはそんな謂れのある植物を施した。柑橘類が多い?ミカンやらアイツが好きやったし…いや…まぁ、元々は橘いう柑橘があってな。あそこにあるやろ?あの小さい実の木や。あれ自体はめちゃくちゃ酸いけど。
お雛さんの両隣に桜と橘置くのは知ってるな?あれは邪気を払う樹木やからやねん。神社でも桜橘置いてはるとこ多いやろ?御所の内裏に邪気払いの為に植えてあったんを真似たんや。
特に匂いのする木は魔除けとして用いられることが多い。葉が緑のまま冬を越せる樹木は尚更やね。

あ、せやから柑橘類は不老長寿の意味もあるねんで?昔は街道沿いに植えられててな、旅人も食べて良かったらしいわ。ビタミンも採れるししばらく置いといても腐りにくいさかいええのよ。行き倒れを出さん為の知恵やなぁ。』


…《アイツ》はお父さんの奥さんのことだよね?誤魔化すようにお話続けてるけど。
そか、他のおミカンは奥さんの為に植えたんだ!
……んふ。なんだか素敵素敵〜っ。


お父さんはしばらく植えてある木のお話をみんなに聞かせていた。
キタヤマさんたちはめもを取りながら、頭の中にその膨大な知識と知恵を取り込もうと必死だった。お手入れの方法もその木ごとにお訊ねして、お父さんの技術を覚え込む。

たくさんの方が受け継いで残し育ててきた樹木のお力を、今度はキタヤマさんたちが受け継ごうとしてる。


僕はおずおずとツチノコさんに話しかけてみた。

…ねぇ、ツチヒメさん。お父さんがお留守でも畑を守ってくれてありがと。僕、知らなくて…本当にごめんね?

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作者名:みあん | 作成日時:2023年1月23日 0時

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