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そりゃそうです。そんなお力が本当にあるなんて僕たちも今まで知らなかったんだもの。クラタさんはまだウグイスさんのお声を聞いていたから免疫あったと思うけど、僕たちなんてついこないだ知ったとこ。
『…ところで、先に畑の話しとくわな。ぶっちゃけ《たま》はココにある。詳しくはまだ言えへん。言わん間に俺が死んだりしたら、このツチ媛はんが教えてくれるやろ。
あ、ツチ媛はんの為にもな、たまにココの土耕したってな。勿論作物植えてもかまへん。草や木は土から精を吸って、また土に還って精となんねや。その精がツチ媛はんにはええご飯らしい。』
『死ぬとか縁起でもない。じいちゃんは長生きするよ。』
ツチノコさんをヨシヨシしながら、お父さんは畑をぐるりと見渡す。ガヤさんは《死ぬ》というお言葉に少しだけ綺麗な形の眉を顰めた。
お父さんの奥さんが亡くなった時やお父さんが倒れた時のこと思い出しちゃったんだよね?
『ツチヒメ様は肉食じゃないんすか?』
キタヤマさんがおっかなびっくりツチノコさんにお顔を近付けた。
…と、突然ツチノコさんはお身体を起こした!
『シャアァッ!』
『うわっ!!』
キタヤマさんが慌ててお身体を退いてその勢いでおしりもちをつく。キタヤマさんのお顔スレスレのところで、バクンッと宙を噛んだツチノコさんは、ギロンとキタヤマさんを睨め付けた。
『《何でも喰らうぞえ?》だそうです。』
『いやいやいやいやいやいや、心臓止まるわっ!!先に言って?!』
お胸を押さえてるキタヤマさんを見て…あれ?ちょっと笑ってます??
だけど…。
『ツチ媛はん、あんまり脅したらあかんえ?みんな俺の代わりに《たま》守る手伝いしたろ言うてくれてはんねん。仲良うしてな?』
そう囁くお父さんのお顔をそっと振り返るツチノコさん。
彼女はそれからしばらくじっとお父さんを見つめていた。
……ヘビさんってお気持ちがお顔に出ないと思ってたけど、ツチヒメさんはなんだかお顔がとてもお喋りなの。
僕……クラタさんの通訳がなくても、なんだかツチノコさんのお気持ちが分かる気がする。
《…ヤダ。あなたが好きだよ。もっと長く一緒にいようよ!》って僕にも聞こえたよ…?
『とにかくこのくちなわはんがツチ媛はん言うて《たま》の番人頼んでんねん。京都からのお付き合いや。俺のじいちゃんもツチ媛はんに《たま》の番頼んではってな、つまりは《たま》と一緒に来てもろたんやわ。宜しゅう頼んます。』
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作者名:みあん | 作成日時:2023年1月23日 0時