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けれどもツチノコさんはぴくりとも動かない。
でも、クラタさんが僕のそばにしゃがんで、みんなのお邪魔をしないように小声で通訳してくれた。

『《……もう良い。わらわは日の子…日が昇れば甦る。暇つぶしに相手をしてやるで鍛錬は続けよ》だそうです。師匠、良かったね!
……あ、あの、さ。ネコのタマくんも許してくれるってことか訊いてみて?』

ありがと。けど、多分人間のお言葉分かってらっしゃると思うよ、クラタさん?


…だそうです。ネコのタマさんってね、僕とご一緒に訓練してた白に茶色の斑のネコさんなの。毎日ツチヒメさんを…今日はいらしてないから代わりに謝ります。ごめんね?


すると、少ししてクラタさんのお顔がパッと明るくなった。

『《彼奴は肝が据わってきた。もっと頻繁に連れてこよ。もそっとわらわが鍛えてやる》って。ありがとうございます!
良かった〜!これで安心して連れてこれるわ。トシ子ちゃ…あ、今キツネさんか。後で話しとくね。』

クラタさんも、僕たちのこと気にしてくれてありがと。


………クラタさん、ネコタマさんのことも大切にしてくれてる。
トシコさんとクラタさんがお付き合いするかはまだ決まってないけど〜、トシコさんとネコタマさんに今のクラタさんのお顔見せてあげたい!
だってとっても安心してるお顔。ネコタマさんをご自分の身内として認識してらっしゃるってことだもの。

昨日のネコタマさんのお顔が思い浮かんだ。
今ならどんなお顔するのかしら。
きっとまたツンデレ発動して、《しょうがねーな》とか言っちゃってクラタさんに抱っこされに行くのかも。


クラタさんにもトシコさんやネコタマさんみたいに愛するひとが増えていく。
同じように、お父さんにもたくさん愛するひとはいるし、これからも増えていく。
うちのみなさんにも7人7様の愛するひとが増えていって…。
その瞬間の愛する記憶がまた世界をピカピカにする。

……僕のヤキモチは残したくないな。


『やきもち…ツチ媛様に嫉妬しているのかえ、吾妹子?』

トシコさんが僕の呟きを聞いて囁いた。

………うん。お父さんの1番好きなひと、僕じゃなかったって思っちゃって。ツチノコさんもお父さんの奥さんも僕なんかよりまだまだ長い時間お父さんと一緒に生きてきたひとがいるんだなって。
…あ、ちょっと恨みがましくなっちゃった!!ち、違うの。当たり前のことだから別にいいの!

すると、トシコさんは優しく微笑む。


『……お前は私の1番だよ?』

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作者名:みあん | 作成日時:2023年1月23日 0時

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